なるべくリハビリに時間をかけない方法を探って
大谷は'18年にも右肘内側側副靭帯を損傷し、靭帯再建のための手術を経験。再び同じ手術を受けるとなれば、1年から1年半の離脱は避けられない。
「幸いなことに、現在は当時よりも治療の選択肢が増えています。大谷選手をより早く治療し、二刀流として復活させられる医師がいるのであれば、まさに救世主となるでしょう」
大谷の窮地を救えるのは医師だけではなく、活躍を地道に支えてきた“ふるさと”の存在も見逃せないだろう。
「今年から、野球道具やウエアなどはすべて『ニューバランス』と契約していますが、昨年までは『アシックス』でした。アシックスは二刀流に合った道具の開発や、帰国時に利用するジムの提供などで大谷選手を支えてきました。'21年シーズンオフに契約が終了した『明治』は食事面で、あの強靭な肉体をつくりあげるサポート。大谷選手を熟知する日本企業も、救世主となりうるかもしれません」
旧知の存在だけではなく、新たな“ふるさと”も大谷には必要なのかもしれない。
「大谷選手が渡米以来頼りにしてきたのは通訳の水原一平さんですが、彼が結婚してからはプライベートに気を使って、少し距離を置くようにしたとか。野球に集中したいからと浮いたウワサはありませんが、身近で支えてくれる家族の存在があれば……なんておせっかいをついつい考えてしまいますよ(苦笑)」
ほかのメジャーリーガーたちを見てみると、SNSで妻や子どもに対する感謝を公言したり、ヒーローインタビューに家族を伴って登場するなど、家族との絆をアピールするのを大切にする選手は多い。
「メジャーには、選手を家族ぐるみで支える仕組みがあって、子育てについてのサポートも充実しています。選手はシーズン中でも“育休”をとることができますし、球場内に選手たちの子どもを預かる施設もあります。そのため、選手はどんどん家族を球場に連れてきて、家族も練習前にグラウンドに下りていたりしますよね」(梅田さん、以下同)
家族の存在がプレーに及ぼす影響は大きいという。
「家族の意向を尊重して移籍先を選ぶ、という選手もいます。移籍先での生活や引っ越しが子どもに与える影響を考えているのでしょう。単身赴任する選手はいませんね。常に張り詰めた競争にさらされているメジャーリーガーにとって、家族の存在はいい息抜きや、張り合いになっているのでしょう」
“ユニコーンの救世主”という前代未聞の役割を買って出るのは、はたして─。
梅田香子 スポーツライターとして、野球以外にもフィギュアスケートやバスケットボールなど多くのスポーツに精通。現在はアメリカに在住し、大リーグを中心に取材活動を行う