批判ではない「風刺の矜持」

 サザンといえば恋愛についての楽曲を思い浮かべる人が多いかもしれないが、もちろんそれだけではない。

 9月18日にリリースされた新曲『Relay〜杜の詩』は、東京・新宿区の明治神宮外苑の再開発について歌っている。この再開発では神宮球場の改築のほか、高層ビルの建設が予定されており、大規模な樹木伐採と移植が実施されるとのこと。文化人や地域住民を中心に“環境破壊”という声が強まっていた中、その先頭に立っていた1人が、今年3月に亡くなった坂本龍一さんだった。

「坂本さんは小池百合子都知事に手紙を送るなど、計画の見直しのために積極的に活動していました。桑田さんはその思いを知って、幅広い世代が再開発について考えるきっかけにしてほしい、という願いを込めて曲にしたそうです。神宮外苑のすぐ近くには、サザンが長年レコーディングに使用しているスタジオもありますから、いろいろと思うところがあったのでしょう」(スポーツ紙記者)

 サザンはこれまでも、社会への“メッセージ”を込めた楽曲を数多く発表してきた。

「ブラック企業やネット社会、沖縄の米軍基地問題、日本政治の混乱など、そのときどきで社会問題となっていた事象がテーマである歌詞も少なくありません。しかし、それらは批判ではなくあくまでも“風刺”。良しあしを断ずるのではなく、尖った表現方法で社会が抱えている違和感を歌にしています」(前出・音楽誌ライター、以下同)

『文藝春秋』'18年10月号のインタビューで、桑田は自身の“風刺の矜持”について、

《世の中のタブーめいたことを、むしろ積極的に扱っていきたいとも思います》

《きつい風刺をさらりとできるくらい、常に自由でなくちゃいけません》

 と語っていた。

「見て見ぬフリをしないスタンスは、デビュー当時からブレていません。だからこそ、ファンは安心してサザンを追い続けられるのです」

 この先もずっと、四六時中変わらぬサザンでいて!!