「長野県は昔から“長寿県”だったわけではありません。昭和40年ごろは脳卒中による死亡が全国ワースト1位になったこともあるほど。減塩活動に取り組んだ医師がいたこと、行政が県をあげて健康づくり運動に力を入れたことが今につながっています」
と教えてくれたのは、徳島文理大学教授の八幡和郎先生。
食物繊維の多い食事と減塩生活で健康長寿に
内陸に位置して海がなく、雪が多い長野県。以前は冬に野菜がとれず、塩や味噌を使った保存食や塩漬けにした魚を食べる機会が多かった。
「まじめな県民性もプラスに働きました。保健師などの指導のもと減塩だけでなく、ウォーキングなどの生活改善に取り組む人が増えたことで、平均寿命が飛躍的に延び、今では1人当たりの老人医療費が全国一低い県といわれています」(八幡先生、以下同)
亡くなる直前まで元気でいたいと願う「ぴんぴんころり」という言葉も長野県で生まれた。2010年には同県の平均寿命は男女ともに1位となる。
「減塩に伴い、野菜を積極的にとることも県民に推奨されました。食事の時間が他県より長いのですが、特産のキャベツや白菜などの繊維質の野菜やきのこ類を料理に多く使い、よく噛んで食べているから健康長寿になったのではと考えています」
一般的に味噌汁は塩分が多くなるが、信州味噌を使う場合はほかの味噌より使う量が少ない。また、たくさんの野菜をメインにするのが長野の味噌汁の特徴だ。
実際、カゴメによる都道府県別の調査では1日の平均野菜摂取量の1位は長野県だという。
「県民の食卓に欠かせないのが野沢菜漬けです。植物性乳酸菌を含む発酵食品で、おやきの具だけでなく何にでも入れます。少し酸味が出たものも調理していますよね」
八幡先生は収穫量が全国2位のそばも、健康の秘訣ではないかと考えている。そばは血行を促進し、高血圧を抑制する「ルチン」やビタミンB1、B2などを含む。「信州そば」は有名だが、おばあちゃんがそばを打つ家も多い。
「うどんは塩分を含みますが、そばを打つときには塩分を使いません。その点でも長寿につながっているのではと思っています」
また、仕事という生きがいを持って生きていることも、高齢者にはプラスに働く。
「65歳以上の就業率が31.6%と全国1位。農林業に従事する人が多いことから、家にこもらないで働くことが心身を健康にし、寿命を延ばしていると考えられています」
今回は信州の郷土料理の中から、健康長寿に役立つレシピを4点ご紹介。
「野菜をあまり食べない欧米型の生活をしている人には、信州流の食習慣が役立つはずです。ぜひ取り入れてほしいですね」