「ずっとステージに立っていたい」

スポットを浴びていた子どものころや、売れなくてもがいていた時代を笑いを交えながら昨日のことのように話す
スポットを浴びていた子どものころや、売れなくてもがいていた時代を笑いを交えながら昨日のことのように話す
【写真】小学生のころ“のど自慢荒らし”として活躍していた天童よしみ

 そうるは「それは、音楽で会話が成り立っているからだ」と言う。そうるによれば、天童はバンドを率いる“バンマス”みたいな人だと形容する。自分の音のイメージをしっかり持っていて、それぞれのパートにちゃんと伝えられるのだ。そうるはこう続ける。

「よしみさんは、ノンジャンルのボーカリストとしては、ナンバーワンなんじゃないかな。昔は美空ひばりさんがその地位にいましたよね、ジャズもすごくうまくて。よしみさんはジャズだけでなくクラシック系のメロディーも平気で歌えてしまう。チャレンジ精神が旺盛だから、一緒にやっていて楽しい」

 そんな才能に着目したのがジャズトランペッター・日野皓正だ。日野はひばりさんとも『テネシー・ワルツ』などをセッションしたことがある。天童は『愛燦燦』を歌ったが、共演したとき、日野にこう言われた。

「よしみさんの声ってアメリカだよ。アメリカ行きなよ!ニューヨークもいいよ。絶対行けるよ!」

 アメリカ行きはまだ実現していないが、新しい分野へのチャレンジを続け、活動の幅を着実に広げている。

 今年2月公開の映画『湯道』では銀幕デビューを果たし、クリス・ハートと銭湯デュエットを果たしたかと思えば、今度は悪役を演じる。

 9月公開の『BAD LANDS バッド・ランズ』である。安藤サクラ扮する特殊詐欺師らが、思いがけず大金を手に入れたのを機に巨悪に追われるストーリー。天童はヤクザとつながる特殊詐欺の道具屋“新井ママ”。ヒットメーカーの原田眞人監督が、

「天童さんが歌う堂々とした立ち姿がこの役にふさわしい」

 と直々にオファー。演技に厳しい監督なので、天童は終始緊張していたが、

「これまで劇場公演の時代劇で岡っ引きなどの男役も経験してきたので、自分の中のイメージで演じました」