カプセルトイ業界は、キャラクター系を筆頭としたIPを扱うことが定石だ。マンガ発、アニメ発、映画発……あくまで二次的な販路として重宝されていたカプセルトイだったが、その常識を打ち破る“突然変異”の大ヒットガチャが現れる。
第3次ブームを起こしたコップのフチ子
'12年に発売された『コップのフチ子』だ。小野尾さんは、フチ子の出現によって「第3次ブームが訪れた」と語る。
「10万個でヒット、30万個で大ヒットといわれる業界で、キタンクラブが発売したコップのフチ子シリーズは、販売累計2000万個を突破します。同商品は、当時急速にユーザーが増えていたTwitter(現・X)やInstagramで拡散されたことで、爆発的な人気を誇るようになります」
発売当時は無名だったフチ子は、今ではバンクシー(『バンクシーって誰?展』)とコラボをするまでの大スターになってしまった。何とも夢があるではないか。
「コップのフチ子の成功を機に、クリエイターとコラボしたデザイン性の高い商品が続々登場するようになります。新しいメーカーも増え、例えば『ネコのペンおき』などの商品を製造する『クオリア』は、『キタンクラブ』から独立して生まれた企業です。どんどん業界が活性化している」
まるで暖簾分けして広まっていく家系ラーメンのようである。
カプセルトイに夢と可能性を見たメーカーが増えていくことで、多種多様な商品が増加。専門店ができるまで市場は拡大し、現在の第4次ブームにまで発展した。
また、大宮(埼玉県)、仙台(宮城県)、船橋(千葉県)など、日本全国のいたるところで、地元民しか理解できないだろう超マニアックな「ご当地カプセルトイ」も登場するなど、地域を盛り上げるツールにまで進化している。
「少数ロットから生産が可能なガチャガチャは、“誰が買うんだろう”といった挑戦的なネタを扱えることも強み。現在、ガチャメーカーは40社ほどあって、毎月、300~400の新しいガチャガチャの商品が作られています。
回転が早いこともあって、見かけたときに買わないと、もう買えないかもしれない(笑)。そうした消費者心理も相まって、ガチャガチャ人気は高まっているのだと思います」