気になるのは、残された妻が義理の親の介護や扶養の義務を負うケースがどれくらいあるかだろう。

「実は、死後離婚をしなくても、一般的に介護や扶養の義務が生じる例は多くはありません。現実的にはその可能性は低く、民法上の規定や、特別な事情に該当した場合に限られます」

最終手段として死後離婚を検討を

 規定や特別な事情の内容は?

「例えば義理の親と同居していれば、義理の親が経済的に困ったときに扶助しなければならないと規定されています(民法730条)。

 同居していなくても、義理の親から多額の資金援助を受けた過去や、通常、扶養義務を負う直系血族が生活苦に陥っているなどの特別な事情があった場合には、家庭裁判所が残された妻に扶養義務を負わせることも考えられます(民法877条2項)。そういった可能性を完全に排除したい人に限り、最終手段として死後離婚を検討すればいいでしょう」

 死後離婚の手続きは、配偶者との「姻族関係終了届」を自身の本籍地または住所地の市区町村役場に必要書類とともに提出すればOK。この手続きに配偶者の親族の同意はいらず、自らの意思のみなのでハードルは低い。

「死後離婚が完了したら、戸籍には『姻族関係終了』と記載されます。記載されるだけで、義理の親などには通知されません。したがって、どのように関係者に伝えるべきか、そこは注意が必要です」

 では、死後離婚にはどんなメリット・デメリットがあるのかを見ていこう。まずはメリットから。

前述のとおり、義理の親の介護や扶養の義務がなくなるのが第一のメリットでしょう

 姻族関係は消滅し、「赤の他人」となるため、負担を恐れる必要はないのだ。

「通常の離婚の際には、原則として元配偶者は遺産相続や遺族年金の権利を失いますが、死後離婚は姻族関係を終了するだけなので亡き夫との関係は変わりません。遺産相続や遺族年金への影響がなく、権利を有するのも大きなメリットといえるでしょう」