“コンプラ治外法権”的タレント
その決め手になったのは、おそらくSNS。彼は770万人ものフォロワーを持ち、芸人では松本人志に次ぐ2位だ。
ちなみに昨年、橋本環奈が起用されたのも、女優トップのフォロワー数が決め手だったようで、実際、彼女の華のある司会は高評価を獲得。2年連続での起用となった。
また、有吉は昨年、応援ゲストとして純烈と『白い雲のように』をコラボ。猿岩石時代に歌った大ヒット曲ということもあって、瞬間視聴率でもかなり上位だったとされる。
とはいえ、橋本のフォロワーが求めるのは「華」だが、有吉の場合は「言葉」だ。テレビで重宝されている理由もまさにそこであり、NHKもそれはわかっているだろう。
つまり、有吉はダウンタウンやマツコ・デラックス、千鳥、高嶋ちさ子らと並ぶコンプラ治外法権的タレント。ほかのタレントが言えないようなことをズバッと言うことを許され、炎上スレスレで収めることができる。その持ち味を封印してしまえば、カンフル剤の意味がないから、アドリブ的な毒舌も期待されているのではないか。
そもそも、誰もが知るヒット曲が生まれにくい時代に『紅白』をやっていくには、視聴者の興味をつなぎとめられる司会の存在が不可欠。地味になりそうな分「有吉弘行ショー」的なテイストも加えて乗り切りたい、という思惑も感じとれるのである。
それで盛り上がるならめでたいし、彼にとっても一発屋からの復活ストーリーの総仕上げになるはずだ。
個人的には再ブレイクのきっかけとなった、あの芸を久々に見たい。好感度タレント時代のベッキーに「元気の押し売り」と名づけるなどした、即興的なあだ名芸だ。なんだかんだ言って『紅白』は国民的番組で、あだ名のつけがいのある人が大集結するのだから。
ほうせん・かおる アイドル、二次元、流行歌、ダイエットなど、さまざまなジャンルをテーマに執筆。著書に『平成「一発屋」見聞録』(言視舎)、『平成の死 追悼は生きる糧』(KKベストセラーズ)。