その後も、警察や救急隊の到着もスマホを手にした野次馬のせいで現場への到着にかなり時間がかかった。到着した警察が現場に立ち入り禁止のテープを張っても数人がテープの中に入りさらに撮影を続けようとしていたという。
誰がどう見ても人として間違った行動
「あまりに人命救助について協力的な人がいなかった。もう少し……まともになっていかないとまずいなと思いました。目の前で人が刺されて、死にかけているなか“救急車を呼んでください”って聞こえているのにニヤニヤしてスマホを向けてっていうのは誰がどう見ても人として間違った行動だと思うんですね。
そこにいた50人ほどのうち49人が堂々と人として間違った行動をとっている異常……。正義と正義のぶつかり合いではなくて、誰がどう見ても悪であることをやっているということがヤバい」
しかし、その“異常”な空間は、歌舞伎町の現場から地続きするかのようにSNS上に続いた。青笹氏の現場で応急処置にあたったことに対し批判や誹謗中傷が一部で上がったのだ。青笹氏は冒頭のとおり医師免許を取得しているが、医師の道には進まず起業。動画マーケティング業界に進み、動画編集スクール『動画編集CAMP』を主催している。
そのため「研修していないくせに応急処置をしていた」という声が上がった。それも青笹氏が医師免許を取得していることを知っている“医師”を名乗る匿名の者などからも……。
「今回、自分だけでなく(ともにそれぞれ救助にあたった)女性の方も叩かれたりしてて……。嫉妬心というかよくある感情だなと思いました。
そもそも応急処置というのは、例えば救急車を呼ぶとか、AEDとか、別にこれは僕が高校生であったとしても同じことをやっている。医師免許の有無は関係ないことです。自動車教習所で習いますし」
青笹氏は救急隊員が到着するまでABCDEの評価を経時的に行い、自分でできる範囲の処置を行い、救急隊到着後、速やかに引き継いだ。
※「ABCDEの評価」=救急診療の基本となるA(気道)・B(呼吸)・C(循環)・D(意識)を評価し、安定化させるアプローチ
「歌舞伎町で集まってきてカメラを向けていた人たちも民度が低すぎますし、普段からSNSなどで発信しているので、変な人にはたくさん絡まれるんですけど、よっぽどみんな満たされずに生きているというか……。絡んできた人は獣医師でコンプレックス丸出しみたいな人だったので、結局叩いてくるのはこういう人だよなって感じですね」
現代人のスマホのカメラロールやSNSアプリには、持ち主の“心”が写し出されているのかもしれない──。