「初対面の椿の家で断りなく台所のコーヒーをセルフでおかわりしたり、アポなしで訪れた玄関先でコンビニの廃棄おにぎりを食べ散らかす紅葉。椿の家に呼び出されたゆくえが、一度は職場で配ったお菓子をかき集めて手土産にして持っていくなど、常識的に大丈夫なのかと思える場面が毎回めじろ押しでした」(神無月さん)
前出の当山さんも、
「1話で男友達(仲野太賀)からもう会えない、と言われたゆくえが『しょうもな』って吐き捨てるんです。婚約者が女友達と2人でカラオケにいるのを嫌がることを『しょうもな』で片づけるのが不愉快でした」
生きている人間に向かって「合掌」
そしていちばん強烈だったと神無月さんが言うのは、3話の“合掌シーン”。
「椿が純恋(臼田あさ美)に婚約破棄されて、ふっ切るために指輪を花壇に埋めて手を合わせる、ほかの3人も共に合掌して笑い合う。その後も3人が椿の家を訪れるたびに花壇の《オクサマ》と書かれたアイスの棒に手を合わせるのですが、椿と最後の話をしに来た純恋を、3人が合掌して迎え入れたんですよね。確かに純恋の仕打ちはひどかったけど、生きている人間に普通、合掌するか? 学校のいじめで行われる『お葬式ごっこ』に近い悪趣味を感じてしまいました」
と、他者の傷には無自覚な登場人物に疑問を投げかける。
「脚本の生方さんは“ドラマで使われる『当て馬』とされる人間にもちゃんと人生があるし、それを大事に描きたかった”と語っていて、実際『silent』ではそう描かれていました。だから余計に『いち花』での夜々の同僚・相良(泉澤祐希)のやっつけのようなクズ男描写や、紅葉をナンパ要員としか見ないコンビニ同僚などモブキャラへの愛のなさも、違和感のひとつです」(神無月さん)
残り5話で「いちばんすきなドラマ」となるか?