「友だちというより、平井さんからすれば憧れの人。学生時代に失恋した際、KANさんの『君が好き胸が痛い』を泣きながらカラオケで歌っていたそうで、平井さんの十八番なんです。ピアノのあるお店で食事をし、KANさんの伴奏に合わせて平井さんが歌うこともあったみたいです」
死ぬまでに1曲は書いてもらいたい……。それほど強烈に平井はKANさんを敬愛していた。ともに過ごした時間は、特別だったはずだ。
一方、KANさんも平井を尊敬していた。WEBインタビューで、KANさんは平井についてこう明かしている。
《それは、もう、すごいでしょ! 魅力的な声ですし、もちろん詞も曲も素晴らしいものはいっぱいありますけど、ライブを観ていていつも思うんです、すごく謙虚だなって。日本を代表する素晴らしいシンガーの一人なのに、僕はまだまだぜんぜん下手》
「マイペースな活動方針に切り替え」
平井が瞳を閉じれば、KANさんとの日々が浮かんでくるだろう……。平井の所属事務所に話を聞いた。
「KANさんの葬儀には、11月15日の通夜と16日の告別式、両日に参列させていただきました」
――1年以上、コンサートを行っていないが。
「特別な理由はございません。充電期間と認識いただければと思います。現在はマイペースながら、楽曲制作などをさせていただいております。もともとデビュー25周年のイヤーの全国ツアーなどを終えて、一度リセットし、マイペースな活動方針に切り替えようと考えていた矢先、コロナ禍になってしまいました。情勢を見ながら活動しており、現在に至っております」
――今後の予定は?
「コンサートに関しては調整中ですが、地方のファンの方々などから、まだまだ不安がある旨をお聞きしており、全国的に安心してコンサートを行えるタイミングを見計らっている状態です。なので、はっきりしたことは、まだお伝えできない状況です。ご理解いただければと思います」
――コンサート映像が劇場公開されるが、KANさんとの共演映像もあるか?
「KANさんには生前、ステージ及び楽曲制作で大変お世話になりました。残念ながら、今回の映画館上映作品の中には、ステージ共演した楽曲は使用しておりません」
とのことだった。
11月18日に放送された『情報7daysニュースキャスター』(TBS系)で、総合司会の三谷幸喜はKANさんについて、亡くなる1か月ほど前にメールをもらったことを明かした。そのメールは、KANさんが病気を押して行ったパリ旅行のお土産を、平井に預けておくとする内容だった。
「それで昨日、平井さんに連絡をとって“チョコレートを受け取りに行きたいんですが”と言ったら“大変申し訳ないんですけど、食べてしまいました”って。どうしても我慢できなかったらしいです。どんなチョコレートだったんですかね……」
三谷からこのエピソードを聞いた安住紳一郎アナは、
「三谷さんの今の笑い話が、KANさんに届いていると思いますよ」
と、締めようとしたが、三谷は、
「笑い話ではありませんよ」
と、真顔で返していた。平井が口にしたチョコレートは、きっと、どこかしょっぱくて――。