命を守る22℃の室温設定
暖かい居間から、廊下などの冷たい空気や床などに触れると、身体は熱の発散を防ぐため、血管がぎゅっと収縮する。血管が収縮すれば血圧は上がり、血管に負担がかかってしまう。すると、血圧が乱高下したり、脈拍が変動する「ヒートショック」という現象が起きる。
「私たちの血管は加齢とともに弾力を失い硬くなっていきます。高齢になるほど血管の収縮によるダメージを受けやすいため、65歳以上はヒートショックを起こしやすい。暖かい居間と寒いトイレを行き来するだけで、血管の収縮が起こります。
それが繰り返されれば、血管はさらに弾力がなくなって硬くなる。その状態で脳や心臓の血管に負担がかかれば、命に関わる疾患が起きる可能性が上がります」
例えば脳の血管なら、血管が詰まる「脳梗塞」や、動脈瘤というこぶが破裂する「くも膜下出血」などが。心臓でも同様に、心臓の血管が詰まる「心筋梗塞」などの重篤な疾患を起こす引き金になる。
「家の中のヒートショック要注意スポットは、浴室とトイレです。実は浴室内での不慮の溺水事故の死亡者数は、交通事故の死亡者数より多い。
風呂にはだいたい1人で入るので、どうしても発見が遅れがちです。寒いトイレでもいきんだ瞬間に血圧が上がってしまう。朝は特に気をつけて」
冬の時季の室温は、何℃が理想的なのか。
「1年の中で日本人の死亡率が最も低いのは6月で、その6月の東京の平均気温は約22℃です。この気温は、命を守るための理想的な温度ではないかと考えられます」
そのため、断熱性能を高めて室温を上げるには、熱が逃げやすい窓などのリフォームを行うのが効果的。経済産業省と環境省が行う「先進的窓リノベ事業」や、自治体による補助制度などを利用して、工事費用の助成を受けるのもおすすめだ。
「リフォームしたところ、血圧が3.5mmHg下がったという統計もあります。厚生労働省は、年間の脳卒中死亡数が年間約1万人、冠動脈疾患死亡数が約5千人減少すると推計しています」