部屋が広いとムダを生むだけ
「実は震災の前は、もう少し広いところに引っ越したいと考えていた」とアパさん。しかし、今の自分に不要なものをそぎ落としていく作業を進めると、今以上の部屋の広さは必要ないと思い始めた。
「むしろ、スペースがあると無駄が多くなるとわかりました。家賃も水道光熱費も高くなるので、コスパが悪いのです。それに、広い収納があれば、意図せず物が置けてしまい、物が物を呼んでしまう。デメリットが大きいと感じるようになりました」
広い部屋で物が充実した生活こそ、便利で快適だと思い込んでいたが、それは勘違い。自分の生活に合う物の適量と適度な広さがあることに気がついたと語る。
さらに、必要性を感じないものを手放して好きなものだけを残していくと、部屋がスッキリするだけでなく、生活のスタイルも変わっていった。
「やらなければならないことを真っ先にできるようになりました。物が多いと、掃除も洗い物も面倒くさくて後回しになりがち。
でも、物が少ないとやることのハードルが低くなるから、家事などのスピード感がグッと上がりました。洋服も食器も少ないので、選ぶ手間も時間もいらない。
丁寧な暮らしがしたいと思っていたのですが、そういう暮らし方を選ぶ私は、実はシンプルで効率の良い、悪く言えば“手抜き”な暮らしが合っているのだなと実感させられました」
そこからは自分らしく過ごす部屋をとことん追求。食事もメニューのバラエティーより栄養面を重視し、手軽に作れる料理で毎日を固定化した。
「誰に合わせることなく、自分が大切にしたいものだけを大胆に少数精鋭で残していけたのは、ひとり暮らしの醍醐味かもしれません」
たくさんの物を手放した一方で、手放せなかったのは、部屋に飾るインテリアの数々。残ったものは、それが自分にとって本当に大切で興味のあるものだとハッキリしたという。
「人は物がたくさんあるからこそ逆に迷ったり、悩んだりするのかなと。好きなものだけに囲まれた部屋に整えることで、自分の歩きたい人生がより鮮明になりましたね」
(取材・文/河端直子)