世界のキタノの作品に役者たちは出たい

「世界のキタノ」の作品に出演したいと手を挙げる俳優陣は多い。4位の『アウトレイジ』シリーズは、その証左だろう。

 アンケートの声でも、「豪華な俳優たちの演技力。迫力ある演技を恐怖とともに見られた」(千葉県・48歳・女性)というように、個性的な役者たちが集うこともたけし映画の見どころだ。

「『その男、凶暴につき』に端を発するバイオレンス映画は、たけしさんの代名詞ともいえる作風ですが、『アウトレイジ』の1作目は2010年です。すでに暴力的な描写は好まれない時代になっていた。しかし、たけしさんは実績があることに加え、当時タッグを組んでいた(『オフィス北野』社長の)森昌行さんが資金繰りを含め、プロデューサーとして敏腕だった」(よしひろさん)

 同作品は大ヒットを記録し、シリーズ化されるまでに成長する。

「この作品に登場するようなキャラを演じることは、役者としての幅が広がりますからたまらないでしょう。一方で、事務所はイメージの低下になりかねないので、そうした役を演じさせたくない。ですが、たけし映画は役者を一皮むかせるという意味でも稀有な存在」(よしひろさん)

 監督でありながら名優でもある。この点が、たけし作品の強烈なオリジナリティーとなっているわけだが、第3位の『その男、凶暴につき』('89年)は、まさにその典型例だろう。

「もともとたけしさん主演で深作欣二監督の予定でしたが、監督はスケジュールの都合がつかず降板。そこで白羽の矢が立ったのがたけしさん。即興性を生かす演出で鮮烈なデビューとなりました」(よしひろさん)

 結果的に、これが映画監督・北野武の才能を開花させる。漫才師であり、芸人であるたけしは、新鮮味がなくなるリハーサルを好まなかった。

「『首』でも、立ち位置のテストを1回やるだけで、すぐに本番を撮影したとか。あまりに早いので、出演する役者陣は不安になるみたいです(笑)。また、往年の名監督は、モニターの前から動かないことが一般的でしたが、たけしさんは演技指導も含めて動くタイプの監督。この点も特徴的です」(よしひろさん)

 また、上位にランクインされた作品の多くが、「ものまねされやすい作品が多い」(よしひろさん)と分析するように、「菊次郎だよバカヤロー」(『菊次郎の夏』)、「今からちょっと殺し合いをしてもらいます」(『バトル・ロワイアル』)など、たけしのものまねをしたくなるシーンやフレーズがある作品が選ばれている点も見逃せない。

 そして、第2位に名を連ねたのが、やはり今なお多くの人にものまねをされる『戦場のメリークリスマス』('83年)だ。

「『メリークリスマス、ミスターロレンス』というセリフが忘れられない」(長野県・53歳・女性)、「俳優としても才能があるのだと驚いた。色気や狂気がすごい」(神奈川県・55歳・男性) 

『戦場のメリークリスマス』撮影のために頭髪を刈り込むたけし
『戦場のメリークリスマス』撮影のために頭髪を刈り込むたけし
【写真】『戦場のメリークリスマス』撮影のために頭髪を刈り込むたけし

 というコメントが寄せられたように、本作をきっかけに俳優・ビートたけしの演技力に魅せられた人は多い。よしひろさんは、「当時演技経験がゼロだった坂本龍一さんを含む、異色のキャスト陣が見事にハマった映画」だと語る。

「大島渚監督は、たけしさんが出演している『御法度』でも、新人だった松田龍平を抜擢します。『戦メリ』のたけしさんにもいえることですが、存在感だけで雰囲気が出るような人をキャスティングするのがとても上手。たけしさんが演じたハラ(・ゲンゴ)軍曹のように、そこにいるだけで説得力がある。6位の『バトル・ロワイアル』、7位の『血と骨』は俳優ビートたけしの魅力が詰まっている。人気が高いのも納得」(よしひろさん)