柏木由紀子さん「笑顔になれる日なんて来るわけがないと」

 柏木由紀子さんは、夫である坂本九さんを1985年の日航機墜落事故で突然失った。今年の雑誌インタビューでも事故当時の記憶は38年たったいまも鮮明に覚えている、と答えていた柏木さん。

もうすぐ76歳になるが、ファッションも楽しむおしゃれ番長の柏木さん(本人インスタグラムより)
もうすぐ76歳になるが、ファッションも楽しむおしゃれ番長の柏木さん(本人インスタグラムより)
【写真】夫との死別を乗り越えるために必要な「コーピング」の方法

「暑い季節になると、今年もあの日がやってくることを思います。事故からしばらくは『笑顔になれる日なんて来るわけがない』と絶望的な気持ちでした」と当時の心境を語っていた。

 柏木さんのように突然の死別だった場合、なかなか現実を受け入れられないケースはあると松岡先生は話す。

「予測しない事態の場合、衝撃も大きいのでグリーフが重症化したり、長引いたりすることもあります。亡くなったということをしっかり悲しまないと、人は前に進めないんですね」

 時間とともに悲しみが和らいでいくことで、ようやく笑顔になれたと語った柏木さん。一方で、悲しみが和らぐことに罪悪感を感じる人も多いと松岡先生は指摘する。

「時間がたち悲しみが和らぐことを故人への思いが薄れていくように感じてしまう方がいるんです。でもそれは忘れることではなく、グリーフから回復するために必要なプロセス。

 ケア外来では、罪悪感を抱く必要はないです、しっかり自分の人生を送ることが大切ですよという話をさせてもらっています」

コーピングとはストレス要因の解決もしくは負担を減らすことを目的として、問題に対して何かしらの行動を起こすこと
コーピングとはストレス要因の解決もしくは負担を減らすことを目的として、問題に対して何かしらの行動を起こすこと