伝統ある宝塚、歌舞伎界からも迷言が……

 実際に崩壊してしまったのが、違法薬物によって“廃部”が決まった日本大学アメリカンフットボール部だ。悪質タックル問題から約5年。連日、情報番組で取り上げられる様子は、まるで再放送を見ているかのようだった。

東京都中野区にある日本大学アメフト部の寮(『スポーツ日大』ウェブサイトより)
東京都中野区にある日本大学アメフト部の寮(『スポーツ日大』ウェブサイトより)
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「ただし、『(澤田康広副学長に)もみ消してもらえると思い、安心した』と法廷で発言した元アメフト部の被告の発言は、忖度がはびこる今の世の中を考えると、“よくぞ言った”と思います」(吉田さん)

 部関係者は、「そのような期待はそもそもあり得ない話」と否定しているが、もはや日大アメフト部の信用は地に堕ちた。

「40~50代になると、長いものに巻かれてしまう。何があったかを若い世代がきちんと言葉にすることはとても大事。そこから風穴があくことがある。『もみ消してもらえると思った』という発言は、私の中では名言」(吉田さん)

 一方、決着があやふやで釈然としないのが、団員の死亡問題で逆風にさらされた宝塚歌劇団だ。会見では報告書を公表したが、その内容は「強い心理的負担が故人にかかっていた可能性が否定できない」というもの。「まるで悪魔の証明の逆バージョンのよう」とは大野さんの見解。悪魔の証明とは、「ないことを証明する」ことだ。

「“故人にかかっていた可能性が否定できない”──、これでは何とでも受け取ることができます。あったかもしれないけど証明できません、そう説明しているわけです。都合の良い発言をするから、世間からは『何を言っているんだ』と迷言、珍言扱いされる」(大野さん)

 そして、「価値観の変化に気がつかない組織や企業は瀬戸際に立たされる」と続ける。

 この大野さんの指摘に、吉田さんも同調する。

「例えば旧ジャニーズもそうですよね。恩義があることはわかります。しかし、退所したタレントたちもたくさんいる。彼らは、時代の流れを見誤らなかったということ」(吉田さん) 

 事実、謝罪会見直後に流れを見誤って、インスタグラムに《show must go on!》と投稿した木村拓哉は炎上した。

会見直後の”ジャニーズイズム”「showmustgoon!」と投稿した木村(木村拓哉本人のインスタグラムより)
会見直後の”ジャニーズイズム”「showmustgoon!」と投稿した木村(木村拓哉本人のインスタグラムより)

 新しい時代の価値観を受け入れる──。だとしたら、伝統芸能の世界に身を置く市川猿之助の行く末も気になるところ。「許されるなら歌舞伎で両親や迷惑をかけた方々に償いたい」と、公判で胸中を明かしたものの、はたして梨園はどう判断するのか。

2023年7月31日、原宿署から保釈された市川猿之助
2023年7月31日、原宿署から保釈された市川猿之助

「いくら執行猶予がついたとはいえ、両親の自殺ほう助をした彼を復帰させるのは、難しいのではないか。元の世界に戻れたとしても、『歌舞伎の世界は浮世離れしている』と世間からバッシングを受けかねない。旧態依然とした業界が、次々と刷新を迫られるのが昨今の潮流」(大野さん)

「寄らば大樹の陰──と言いますが、その大樹が根幹から揺らぐ時代です。中には、腐り始めている大樹もある(苦笑)。業界や組織に頼る時代ではなくなってきている」(吉田さん)

 それを痛感するのが、毎年恒例、政治家たちの失言、暴言だろう。