しかし、その後の検査で左乳房の別の部位にもがんがあることがわかり、全摘手術を提案される。
「その時が一番ショックでした。部分切除だと思って心の整理をしたら全摘と……。“胸がなくなったら女じゃなくなる”とは思いませんでしたが、ただ、今まで当たり前のようにあったものがなくなってしまうということが、すごく怖かったし、嫌だったんです」
「胸がなくなっても私は私」と思えるようになった1冊の本
仕事柄、集めていたかわいい下着が着られなくなってしまう、趣味のボディボードにビキニ姿で乗れなくなってしまう……。失ってしまうことばかりに目が向き、つらい毎日を過ごした。
「そのころ、25歳で乳がんを患って左乳房を全摘し、乳房再建はしないと決めた元SKE48の矢方美紀さんの存在を知りました。矢方さんの『きっと大丈夫。~私の乳がんダイアリー~』という著書を読み、その考え方に触発されて“胸がなくなっても私は私で変わらない”と考えられるようになりました。全摘手術を受けることにしました」
乳がんで乳房の一部を切除したり全摘した場合、乳房再建という選択肢がある。shantiさんは、乳房再建を選ばなかった。
「乳房再建には人工物を使用する方法と、自分の身体の一部を使って再建する方法があります。身体の一部を使うとなると乳がんの手術のほかにも傷ができることになります。すごく悩みましたが、乳房再建はしないことにしました」
左乳房の全摘手術は昨年3月に行った。術後の経過もよく1週間ほどで退院。
「かなりの痛みを覚悟していたのですが、ほとんど痛みはなく、手術の翌日から歩いてトイレに行けるほど体調がよかった。放射線治療もなく、手術後は女性ホルモンの作用を低下させる薬を飲むホルモン療法だけを続けています」
半月ほどの休養期間を経て仕事に復帰したshantiさんには、大きな気持ちの変化があった。
「私は自分に自信がなく、人前に出て話したりすることがすごく苦手なんです。でも、“私にしかできないことを頑張りたい”という気持ちが湧き、百貨店のイベントスペースで商品のPRをする係に立候補しました。四苦八苦しながらパソコンで資料を作ってお客様に商品のPRをするうちに、少しずつ自分に自信が持てるようになってきたような気がします」