お年玉は“親心”の賜物
ダメなのは父親だったのか……。正行さんが続ける。
「とはいえ父は昔から、盆暮れの付け届けを忘れなかったり、世話をしてくれた人に必ずチップを渡すなど、“しきたり”を重視する人間。お年玉にしても毎年、ぽち袋と一筆箋を(書画用品の老舗店である)銀座の鳩居堂へ出向いて買う。母に銀行で新札を用意してもらい、それぞれに一筆を添えたものを用意しているんです。それを、正月に集まった際に一人ひとりに手渡しをする、というのが徳光家のしきたりでした。
でも、最後には自分の欲望のほうが勝ってしまうんですよね……。子どものころ、競馬に行きたいという父に、他の人からもらったお年玉を取られたこともありました」
父のダメさも認めつつ、文化やしきたりを大切にしたい姿勢は尊敬するという。
「クレジットや電子マネーが当たり前になった今、現金をわざわざ袋に入れて渡すというお年玉は確かにかなり前時代的なものでしょう。ただ、お正月に門松を立てて祝ったり初詣に行くのと同じように、伝統やしきたりとして残ってほしい。徳光家のお年玉も、父の“親心”の賜物であって、私は“お年玉をいただく”という文化を継承しているだけなんですけどね(笑)」
正行さんはこうも続ける。
「母の認知症が進行していて、様子をみるため月に何度か実家を訪れるのですが、そのたびに私の好物を作ってくれたりと、むしろ私の世話を焼こうとしてくれるんですよね。父が大切にしているしきたりと同じように、これからは私から母にお年玉を渡してみようかなと」
何はともあれ、人を喜ばせるアイテムとして「お年玉」は残ってほしいもの!