自分の感情は抑え、いつも相手に寄り添った。
「優しい八代さんですが、肝っ玉が据わっており、弱気なことは言わない。気配りもする人で、僕に“大丈夫? 疲れた顔しているよ”って言葉をかけてくれて、よく人を見ていました。入院直前の旅番組のロケでは、3日間ずっと一緒で、夜は宴会も。普段お酒は飲まないのに、乾杯の際にビールをひと口飲んで……」
人を招いて大勢で食事をするのも好きだった。
“年内には退院して行きますね”
前出の大木凡人は、箱根の強羅にあった八代さんの別荘にも招かれたと話す。
「15人くらい入れるコタツがあって、ロシア式暖炉『ペチカ』の前でお酒が飲めて、魚を焼いて食べられる囲炉裏があって、30人ぐらいで宴会ができる間取り。バルコニーでは、50人ぐらいでビアパーティーもできる。別邸として、陶芸ができる工房もありました。私やダンナさんがゴルフに行っている間、八代さんはいつも絵を描いていました」
八代さんにとっては、夫とともに創作するアトリエでもあった。総工費1億2000万円という豪華な別荘だが、2023年に売却。現在は一棟貸し切りの宿泊施設になっている。
「昨年3月に八代さんから売っていただき、改修工事をしました。9月にはお披露目式をして、八代さんにもお越しいただくことになっていたんです。施設名を『八代別邸』にしていいか相談したところ、いいですよと言っていただきました。“年内には退院して行きますね”と、八代さんにも楽しみにしていただいていたんですが……」(『八代別邸』運営会社社長、以下同)
こだわりの詰まった建物だという。
「八代さんがこだわっていらした囲炉裏などは、そのまま残しながらも、近代的にリニューアルしました。ご本人に来ていただけなかったのは残念ですが、八代さんの名を汚さないものにできたかなと思います」
思い出が詰まっているからこそ、夫の“裏切り”と一緒に“塗り替える”ことを選んだのか。八代さんや夫の作品を展示していた自宅に併設したギャラリーも、今は閉鎖されている。今後について、所属事務所に問い合わせた。
「ギャラリーはコロナ禍以降、閉めております。お別れ会については、これからどうするかを決めます」
不世出の歌姫は去ってしまったが、喜びと悲しみが入り交じる繊細な心のひだを表現した歌は消えない。いつまでも人々の胸に響き続ける。