ゆっくりと進むものも【甲状腺がん】
まずは、男性より女性に多い甲状腺がん。生存率の高いがんの筆頭格だ。
「甲状腺がんの中で最も多く、約90%を占めるのが乳頭がんという種類なのですが、このタイプはとてもゆっくりと進むことが知られています。命にかかわることが非常にまれながんです」
そう教えてくれたのは、広島大学の上田勉先生だ。
甲状腺というのは、のど仏の下にある小さな臓器。蝶(ちょう)が羽を広げたような形をしていて、そこから甲状腺ホルモンというホルモンが一定の量、分泌され続けている。そこにできるがんが甲状腺がんだ。
「甲状腺がんの中には、未分化がんと呼ばれるタイプなど、数は少ないですが、悪性度が非常に高く、治療の選択肢も限られるものもありますが、乳頭がんはおとなしいがんで、手術したとしても取り除きやすいのが特徴です」(上田先生、以下同)
ゆっくりとしか進行しないことが多く、早く見つかれば手術で治る可能性が非常に高いという。どうすれば早期発見できるのか。
「胃がんや肺がんと違って甲状腺がんには効果的な定期検診がありませんので、自覚症状が出たら早めに医療機関に行くようにしてください」
食べ物を飲み込んだときのちょっとしたのどの痛みなどの違和感や声のかすれ、のどの腫れが2週間以上続いたら要注意だという。ポイントは2週間。
私たちの身体には細胞や組織を修復するシステムが備わっているため、ちょっとした痛みや腫れなら徐々によくなっていくが、がんによる症状は時間の経過とともに軽くなることは少ないからだ。
「気をつけてほしいのは、内科ではなく耳鼻咽喉科に行ってほしいということです。甲状腺など、のどの専門家は耳鼻咽喉科です。正確な診断をするためにもぜひ耳鼻咽喉科を受診してください」