判断力低下による想定外のトラブルも
認知症は医療、介護以外にもさまざまな費用が発生する。
迷子になり、介護事業者に捜索を依頼した場合の人件費。遠方で発見された場合の送迎タクシー代。成年後見人として家庭裁判所から弁護士や司法書士などが指名された場合の毎月の報酬。いずれも数万円かかることが多い。
判断力が低下した状態で高額な買い物をしてしまったり、自宅外で交通事故などのトラブルを起こして家族が損害賠償を求められたりする可能性についても覚えておきたい。
すでに加入している自動車保険や火災保険に個人賠償責任補償の特約がついているか、そしてその補償内容を確認しておこう。
「認知症介護は長期戦です。太陽生命の調査では、認知症の介護期間は平均5年かかることがわかっています。その結果、介護にかかる総額は、平均258万円に。もらえるお金はしっかり活用することが重要です」
認知症で「もらえるお金」は、がんのときと比べると、少々心もとない。
「例えば、高額療養費制度に似た、高額介護サービス費というものはあります。ただ、もらえる金額は、要介護状態に応じて決められた限度額の範囲内だけ。限度額を超えて介護サービスを利用した分については、補助はナシです」
なお、年間の医療費や介護保険の自己負担額の合計が一定額を超えた場合には、超過分がもらえる高額医療・高額介護合算療養費制度もある。
ちなみに、家族の力でなんとかしようとして子が仕事を辞めるのはおすすめしない。介護が終わったあとの自分たちの老後生活が不安定なものになるからだ。
「介護される本人の預貯金や年金でまかなうと決めておきましょう。あとは介護休業給付金を利用しながらなんとか仕事を続けることをおすすめします」
また、やむなく介護に専念する人は家族介護慰労金がもらえることも。