松田聖子と中森明菜、2人のトップアイドル
その後、歌手やアイドルなど錚々たる顔ぶれに振り付けをすることになる三浦さんだが、当時はダンスパフォーマンスを前面に押し出す作品は少なく、あくまでも振り付けは「歌手の表現の方法のひとつ」だと振り返る。
「歌手は詞を伝える“ストーリーテラー”だと、俺は思っているので、いかに彼らが楽に歌えるかを考える。お芝居に近い感じですね。例えば“あなた”という言葉を伝えるときに手を差し伸べるなら、どれくらいの高さでやれば相手に伝わるか。テレビのときとコンサートのとき、会場の大きさでも変わるから、そういうことを大事にしてきました」
永遠のアイドルである松田聖子のデビュー曲『裸足の季節』も担当した。
「聖子の場合、ガーッと売れちゃって、彼女に振りを伝える時間が30分しか取れなくなっちゃったんですよ。化粧品のCMで、歌詞に『エクボ』って言葉が出てくるから、そこだけ決めればあとはどうでもいいやって(笑)。彼女は自分でできる子でしたからね」
そして当時ライバル的な存在だった中森明菜の『十戒』も三浦さんの振り付けである。
「『十戒』は『発破かけたげる』ってところでピンときたのが“往復ビンタ”。似たような手を振る動きが『少女A』にもあったんですけど、それまでは振付師の言うままに動いてたんじゃないかな? だから『これは往復ビンタだからな』って説明してね。
俺は明菜に対してこの1曲だけしか(振り付けを)やっていないんです。でも、俺の振り付け指導を受けた芸能人は、それ以降表現の幅が確実に広がっていると、マツコ(・デラックス)やミッツ(・マングローブ)なんかも言ってくれていますね」
確かに、彼女のその後の表現力・活躍は、読者の皆さんの知るところである。また、対照的な2人として印象に残っているのは早見優と堀ちえみだ。
「優は俺が『そんなんじゃ練習やめるぞ!』って怒ると、むしろ喜んでやめちゃうんですよ。だから、おだてておだてて、なんとかやってもらう。
ちえみは逆で、ガツンと言わないとやらない(笑)。リハーサルの初日とかなんて、はしゃいで全然覚えないんですよ。怒るとボロボロ泣くんだけど、でも次の日にはちゃんと覚えてくる。それが定番になっていました」