“幸せ感じ力”が高いかどうかの差
誰もが望むであろう「幸せな最期」。在宅で数多くの患者を看取ってきた中村先生は、幸せな最期を過ごした人には共通点があるという。
「ひと言でいえば、“幸せ感じ力”が高いことでしょうか。70代のある末期がん患者さんは、『がん末期と知ったおかげで、死ぬ準備ができてよかった』と口にされました。
余命を知り相当つらいはずなのに、『死ぬ準備ができるのは、ある意味幸せよね』と明るく話す姿が、とても印象的でした。物事にはプラスとマイナスの両面あり、どう捉えるかは人の心の持ちよう次第。
これは最期の過ごし方についても当てはまり、プラスの面から見られる人ほど、自分なりに納得のいく最期を迎えられる気がします」
そういった姿勢は本人だけでなく、家族にも同様に求められる。幸せ感じ力の差によって明暗が分かれるのだ。
「現実を受け入れられない家族も中にはいらっしゃいます。大切な人に死が近づいているのは、誰だって受け入れ難いことです。でも、『最期まで諦めずに闘い抜いてほしい』などと願えばどうなるか。
本人はそれに応えようと無理を重ね、つらい思いをしかねないのです。頑張るのを強いるのではなく、現実を受け入れて寄り添うことにより、本人も家族も幸せに過ごせることを、私は看取りの現場から学びました」