命あるうちに世に出したかった「私の遺書」

「1980年代半ばに世界経済の2割近くを占めた日本のGDP(国内総生産)は、いまや5%を割り込むところまで転落しています。なぜ、日本経済が転落したのか。理由は2つあります。ひとつは、財務省がとてつもない財政緊縮(増税等)を続けたこと。もうひとつは、1985年に墜落した日本航空123便の“事件”で、アメリカに大きな借りを作ってしまったことです。日本航空123便墜落は事故ではありません。戦後最大の事件です」

 森永氏が長年、日航123便の墜落を事件と訴えていることは暗に知られている。同書の一文では、がんステージ4の告知を受けた瞬間、何かを食べたい、どこかに行きたいなどとは微塵も思わず、「自分の命あるうちにこの本を書き上げて世に問いたい。そのことだけを考えた」と胸中を告白。そして「その意味で本書は、私の40年にわたる研究者人生の集大成であると同時に、私の遺書でもある」と続けている。

 おりしも、日経平均株価はバブル後の最高値を更新中。2024年1月から新NISAがスタートしたこともあり、日本株の好調で日本経済は上向いているように思える。だが森永氏の見方は180度異なり、投資には慎重であるべきと警鐘を鳴らす。

老後資金は新NISAに回してはいけない

「バブル崩壊がいつになるのかを予測できる人は誰もいません。ただ、私は崩壊の日は近いと思っています。新NISAで投じた投資資金は、最悪10分の1になります。ですから、老後資金をNISAに回しては絶対にいけません。投資してよいお金は、あくまでも全損になっても構わないお金だけです」

 しかしながら物価高で庶民の生活は苦しく、増税や社会保険料アップが追いうちをかける。明るい老後を迎えるにはどんな準備をしておけばいいのか。

「大都市を捨てて、トカイナカ(都市と田舎の中間)に移り住む。そこで自給自足に近い暮らしをすれば、明るい老後が待っていると思いますよ」

 埼玉県所沢市の自宅近くに畑を借り、自らその生活を実践。お金も食料も、人に委ねず自分で育てられる力を養うことが第一。森永氏が今伝えたいもう一つのメッセージだ。