各建築家がこだわりの公衆トイレを発案する中で、使用素材をめぐって賛否が起きたトイレもある。
《建築に"いのち"を宿す、をテーマにアニミズムの思想や石庭の文化をパークボーンにもつ日本において、石で楽しいトイレをつくりたいとおもいます》
K氏が設計した“石のトイレ”だが、その柱に利用としたのが、約400年前に大阪城の石垣を築くために切り出されるも、訳あって使用されずに放置された通称「残念石」。これを万博で“再利用”して「万歳石」に変えようと、K氏を含む3人がプロジェクトを立ち上げた。
歴史的価値を損いかねないトイレ
ところが、再利用計画に異を唱えたのが“お城博士”として知られる、城郭考古学を専門とする名古屋市立大・千田嘉博教授。
《木津川市の「残念石」を大阪・関西万博のトイレの柱にする計画。「残念石」は、矢穴や石材加工によって切り出した石のかたちに歴史的価値があります。さらに400年前に切り出して運べるように大坂へ川でつながった赤田川岸などに保管していたという石材の所在そのものに歴史的価値があります。》
自身のX(旧ツイッター)にて、残念石を建物の素材として使用する、保管場所から動かすことは“文化財としての歴史的価値を損いかねない”との見解を示したのだ。これに追随して、SNSでも「残念な計画」などと批判の声が上がるはめに。
2億円を計上するのは便器数が50〜60個の大規模デザイナーズトイレとのことで、上記の建築家たちの設計トイレには該当しないのかもしれない。とはいえ多額の費用をかけた公衆トイレを設置する必要があるのか、まだまだ“つまり”は解消されなさそうだ。