「お金がかかっても解決したい」
前述の南谷さんも不登校児童生徒の親の支援をしてきたが、無料支援には限界がある。
「親御さんにもプライドがあって、自分の家庭が一番だと思っている方も多いんです。話し合いをずっとしてきても、なかなか親御さんの気持ちは変わらない。すると子どもも変われないですし、そこが一番の悩みでした」と南谷さんは話す。
一方でスダチのプログラムを親がきちんと実践するのは、「お金を払っていること」も大きいと小川さんは話す。
「相談に来られる方はお金がかかっても解決したいと、本気で子どもに向き合うケースが多い。サポーターがマンツーマンで親御さんを指導しますし、それが不登校解消の実績につながってきました」(小川さん)
小川さんは自治体などで無料講演を依頼されることも増え、独自メソッドの効果を伝え続けている。
「同じ職場にいても楽しそうに働いている人もいれば、うつになる人もいます。それって何が違うんだろうと考えたとき、子どもが大人になるまでの過程でどういう教育を受け、どういう考えで生きてきたかが重要なんだと思いました。子どもが再登校することは単なるステップでしかありません。一番の目的は、この先の将来を幸せに生きていくことなんです」(小川さん)
リアルに寄り添ってくれる南谷さんのような活動や、スダチの科学的なアプローチにより、親が変われるかどうか。不登校児童生徒29万人をこれ以上増やさないための鍵は、親の子どもへの接し方にかかっている。
南谷素子さん(なんや・もとこ)
高校英語科講師、予備校勤務を経て、自宅にて学習塾を8年間開室。2018年より東京・荒川区で「こども食堂サザンクロス」を運営。「NPO法人いきば」理事長。ランドセルリサイクル事業「ぐるぐるランド」も手がけ、荒川区内不登校支援ネットワークにも携わる。寄付先などの情報はhttps://ikiba.org/に掲載
小川涼太郎さん(おがわ・りょうたろう)
1994年生まれ、徳島県出身。2019年に総合教育事業の株式会社スダチを設立。不登校の子どもたちに向けたボランティア活動を通して、“目的意識がない不登校”で悩んでいる子どもたちや親御さんが多くいることを知り、2020年4月に不登校支援事業開始。株式会社スダチ https://sudachi.support/
取材・文/紀和 静
取材協力/株式会社ドリームパスポート