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黄色いタキシード姿の男性が手に持つのは、白地に赤いしま模様のハンカチ1枚。茨城のお国訛りのどことなく親しみを感じさせるアクセントで、こんなふうにしゃべり出す。
⼿品師・マギー司郎の鉄板ネタ
「縦じまのハンカチがあります。表も裏も縦じまです。この縦じまのハンカチを手の中に入れて、軽くもむんですよ。そうするとこれが一瞬にして、横じまになるんですよ」
いわゆる“縦じま横じま”と呼ばれるネタだ。
何がどうなるか、観客はすべてお見通し。でも、同じ芸を何度見ても、そのたびに観客は思わず、反射的に笑ってしまう。
「これで何で笑うのかわからない」と本人は真顔で首をひねるが、作為がないこと、つまりはわざとらしさがないところが、おかしみに連なる。
男性の名はマギー司郎。今年3月に78歳になったベテラン手品師である。二十歳のころに足を踏み入れたマジックの世界を、長い間ひょうひょうと生き抜いてきた。
「たいしたことはやってないんですよ。世間のゆとりの部分で生かしてもらっているのが芸人。ただただ、笑ってもらうのがうれしいんですよ。
今78歳でしょう。年取っててよかったなと思いますよ。今ごろ50代だったら、色気とかもあって危なかったかもしれない。今ね、いちばん好きなのが舞台。お金もいただけるし、お客さんが喜んでくれる。こんないいことない。お金を僕にくれる方が『ありがとうございます』って言ってくれるんだから」
58年間、通算の高座数は本人調べで約2万5000回。「舞台を休んだことは1回もない」という芸人人生をひもとく。