三松さんが主宰する夫婦仲相談所に寄せられた事例を紹介しよう。
会話が多いのも仲良し夫婦に必須の条件
●A子さん夫婦は50代で子どもが2人。子どもたちが幼いころ、夫は仕事一辺倒で家事育児にノータッチ。当然、夫婦仲は悪くセックスレスとなった。しかし、下の子が中学生のときに不安定になり、学校に何度も呼ばれるような問題を起こすように。
ここで夫の態度が変化。下の子の話を聞き、会社を休み学校にも足を運んでくれた。さらに子どもが落ち着いたタイミングで「これまで君に任せきりで悪かった」と涙ながらの謝罪があり、妻のこれまでの頑張りに感謝してくれたそう。
以降、夫は掃除や料理もするようになり、夫婦で過ごす時間を楽しめるようになった。
「会話が多いのも仲良し夫婦に必須の条件。〈風呂・飯・寝る〉といった最低限の会話しかない夫婦は、相手への気持ちが冷めやすくなります。一方、お互いの仕事や将来に関する展望など話題が多岐にわたり、話が尽きない夫婦は、将来もそのままずっと一緒に過ごすことをごく自然に想定されています。その場合、セックスレスであることなど気にならないのではないでしょうか」
●B子さん夫婦は、現在40代。フルタイムの共働きで子どもはいない。結婚当初から価値観の違いが顕著でセックスレスとなり、1年近く別居するほど一時は夫婦仲が険悪だった。転機となったのは再び一緒に暮らすようになったタイミングで犬を引き取ったこと。
犬の世話をどうするかで自然に会話が復活。休日は犬の散歩で一緒に公園に出かけるなど、共に過ごす時間も増えた。やがて互いの仕事や友人、親族のことなど何でも話すようになり、不満があるときも犬に向かって「パパが片づけてくれないの」とワンクッション置いて伝えられるように。
夫も犬に「ママに〈ごめん。いつも片づけてくれてありがとう〉って伝えて」と返すなど険悪になりそうな出来事も笑って解決できるようになった。
「お茶を入れたり必要な物を手渡したり。日常のささいなことでも〈ありがとう〉〈助かる〉と感謝の言葉があれば、日々の積み重ねで夫婦の信頼関係はどんどん強まります。それに加えて相手を慈しむスキンシップや言葉がけがあると、たとえセックスレスであっても、互いへの愛情は増していくはず」
●共に80代を迎えたC子さん夫婦。C子さんは若いころに婦人科系の病気になり、挿入を伴うセックスはできなくなった。それでも「かけがえのないパートナーだから、ふれあいを続けよう」と夫婦で話し合い、ハグやキスなどで積極的にスキンシップ。
時にはお風呂にも一緒に入り、互いの身体を洗い合うそう。今も裸で肌と肌をくっつけ合って眠っている。お互いの体温を感じることで安心感が得られるとのこと。
●30代のD子さんは新婚旅行以来セックスレス。D子さんはセックスが好きではなく、夫の性欲もそれほど強くないため、子どもはつくらないと決めた。
でも毎日キスはするし、一緒にゲームしたり夫婦共通の趣味であるキャンプを楽しんだり、ずっと仲良く過ごしている。D子さんは仕事でもっと上を目指していて、夫もそれを応援。仕事の相談や愚痴にも付き合ってくれる夫にD子さんは感謝しているとのこと。
「セックスは子づくりや快楽だけが目的ではなく、女性として、あるいは男性として、互いを必要としていることを確かめ合う行為。なので、必ずしも挿入を伴う必要はないと私は考えています。自分にとって相手がかけがえのない存在であることを日頃から感謝の言葉やスキンシップで伝え合えれば、セックスレスであっても仲良し夫婦でいられるのではないでしょうか」
取材・文/中西美紀
三松真由美さん 恋人・夫婦仲相談所所長。夫婦仲、恋仲に悩む会員と「結婚・再婚」を真剣に考えるコミュニティーを展開。セックスレス、ED、女性性機能に詳しい。恋愛・夫婦仲コメンテーターとしても活躍しており、講演、メディア取材、連載多数。『堂々再婚』(二松まゆみ名義)など著書多数。