「シニア世代では口腔機能の老化『オーラルフレイル』につながります。食べこぼしたり、わずかでもむせ返りがあったら舌力低下のサイン」

 高齢者は食べ物をうまく飲み込めなくなるため、栄養不足になり、心身の活力が下がって寝たきりになることも。

 飲み込む力が低下するので、気管に食べ物などが入って「誤嚥(ごえん)性肺炎」を引き起こすこともある。この病気は現在、日本人の死因、第6位にもなっている。

「長時間、スマートフォンやパソコンを見ているときも、舌力が弱いと重力に負けて舌が下がり、無意識のうちに『落ち舌』になりがち。日頃の姿勢やクセを正すことも大切です」

肩こりやアレルギー、不眠なども引き起こす

 舌力の低下は舌とは一見、関係なさそうな不調や病気を引き起こすこともある。

「全身の筋肉は、筋肉を包む膜『筋膜』を介して連動しています。舌まわりの筋肉はそのスタート地点にあり、全身の筋肉や骨格とも密接にリンクしています。だから舌力の衰えからゆがみが生じて、姿勢、頭痛、肩こり、腰痛の原因にもなってきます」

 さらに、口呼吸だと呼吸が浅く、体内細胞への酸素供給量が不足しがちになる。

「脳が常時酸欠状態で集中力が低下、筋肉が酸欠になると疲労や運動時の息切れなどが起こりやすくなります。その結果、免疫機能低下で感染症やアレルギーを引き起こしかねません」

 また、いびきや睡眠時無呼吸症候群(SAS)につながるケースも多い。悪化すると、心臓病や脳卒中のリスクをも高める症状だというから驚きだ。つまり、舌力の低下は死を招く直接的な原因にもなりかねない。

「自分の舌力をチェックしたいなら、まずは舌先がどこにあるか、意識してみて。舌先が歯の裏に当たっていたら確実に『落ち舌』ですね」

 ほかにも「音鳴らし」で、舌の動きを確認してみよう。