それにしても、こんな顛末になったのはトムにとってなんとも皮肉である。トムは、同じことをニコールに対してやっているのだ。
トムから離婚を言い渡されたのは、ニコールにとって青天の霹靂だった。トムは「こうなることは彼女にもわかっていたはず」と述べているが、ニコールは、その少し前にトムの子供を妊娠して流産していたという、それまで誰も知らなかった事実を明かしている。それが本当ならば、夫婦関係はまだあったということである。
離婚後、サイエントロジーの信者である養子のイザベラとコナーは、ニコールと疎遠になった。それを知っていたから、ケイティは、娘との関係を断たれるのが自分ではなくトムになるよう、先に動いたのだ。
娘は自らの意思でトムに会うこともできるように
スリが18歳になったことで、トムは、毎月40万ドル、日本円に換算すると年間で7億円超の養育費を払う必要がなくなった。それに、大人になった彼女が自分で父に会いたいと思えば、自由に会うこともできる。
成長した彼女の顔は、ますます両方の親に似てきた。まだ若い彼女には、これからいろいろな人生の節目があるだろう。それらの場のどこかで、血を分けた両親が揃うことはあるのか。それは、誰にもわからない。だが、もしそれがかなわなかったにしても、世界一有名な映画スターは、自分の娘の幸せを常に心の中で願い続けているに違いない。
猿渡 由紀(さるわたり ゆき)Yuki Saruwatari
L.A.在住映画ジャーナリスト
神戸市出身。上智大学文学部新聞学科卒業。女性誌編集者(映画担当)を経て渡米。L.A.をベースに、ハリウッドスター、映画監督のインタビュー記事や、撮影現場リポート記事、ハリウッド事情のコラムを、『シュプール』『ハーパース バザー日本版』『バイラ』『週刊SPA!』『Movie ぴあ』『キネマ旬報』のほか、雑誌や新聞、Yahoo、ぴあ、シネマトゥデイなどのウェブサイトに寄稿。米女性映画批評家サークル(WFCC)会員。映画と同じくらい、ヨガと猫を愛する。