「イベントは、スタッフが月ごとに持ち回りで担当します。マンネリ化しない内容で、スタッフ自身も楽しめることを大切にしています」
SNSを始めたのは若者世代への求人が目的だった
やまゆりの里では、料理や手芸、畑作業など、入居者自身が主体になるイベントも活発。その様子も公開されており、《おじいちゃんが一生懸命料理する姿に癒される〜》など、たくさんの温かいコメントが寄せられているのだ。
「施設に入居する前に、その人がどんな生活をしていたのかを、丁寧にヒアリングすることが大切だと思っています。すると、介護が必要になる前は畑仕事が日課だったとか、危ないからと調理を家族に止められるまでは料理をするのが生きがいだったとか、本当にやりたいことが見えてきます」
その入居者の“やりたいこと”をイベントに落とし込んでいるのだという。
「介護のプロがいる施設なら、安全に配慮してそれを叶えてあげられます。私たちのモットーは、施設に入ったら終わりではなく、施設に入ったからこそ、夢を叶えてあげるということなんです」
さらに、SNSで拡散された施設の様子は、人材が不足しがちな介護業界で若い人材の呼び水にもなっている。
「実は、SNSを始めたのは若者世代への求人が目的でした。施設での取り組みを発信してそれに共感してくれるスタッフを増やしたかったんです。そのおかげで、SNSを通じて応募してきてくれた他府県からのスタッフが全体の半数を占めています。平均年齢は30歳。若い人が集まってくれて、施設もさらに活気づきました」
つなぎ合わせた新聞紙を、足先で素早くたぐり寄せる「新聞足こぎゲーム」。高齢者2人が“爆速”で新聞をたぐり寄せ楽しんでいる動画が、4000万再生をたたき出した。
インスタグラムには、《イスの上で安全に配慮しているし、足腰も鍛えられるいいレクですね》《想像を超える速さで新聞が巻き取られていって笑ってしまった》といったコメントがあふれている。
「特に意識せず、普段施設で行っているレクの様子を投稿しただけだったので、反響の大きさに職員も入居者のみなさんもとても驚きました」
と話すのは、新潟市内で住宅型有料老人ホーム・スマイルホームの2棟を運営する、株式会社ヒロセの介護管理課、中村峻さんと渡邉久美子さん(以下同)。
「SNSを始めたのは3年前。閉鎖的なイメージがある介護施設の中でどんなことが行われているのか、いろんな人に知ってもらいたいと思って始めたんです。入居している方のご家族や、介護に携わっていない人にも見てもらい、介護施設のマイナスなイメージが払拭できればと。入居者の方が楽しそうにしている様子を伝えられる明るい内容を意識して投稿しました」