音楽を取り巻く時代の変遷

 過去には、依頼を受け大手鉄道会社のCM曲を作った庭瀬さんだが、その際のギャラも“その金額には遠く及びません”と苦笑い。ただし1曲あたりの単価が低くても、作曲家には印税という強い味方があるのでは?

2000年からアコースティックデュオ『N.U.』として活動。横浜の音楽シーンをけん引する庭瀬幸一郎さん
2000年からアコースティックデュオ『N.U.』として活動。横浜の音楽シーンをけん引する庭瀬幸一郎さん
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CM曲は印税契約ではなく“1曲買い取り”がほとんど。例えば誰もが知るようなサザンやスピッツなどの“広告用に作られたものではない楽曲”をCMで使用する場合のみ印税がかかります。現在のCM曲の多くは、CMのコンセプトに合わせて作られた楽曲で、制作会社がコンペ形式で選んだものだと思いますよ」

 キダさんの高額ギャラの背景には時代もあったのでは、と庭瀬さん。

「いまは音楽お金を出すことがない時代。若い人たちはCDを買いません。YouTubeで簡単に新曲を聴けますし、サブスクなら月500円で好きなアーティストの曲もダウンロードし放題です」

 演者側にとっても、昔のようにデビューへの道が限られているわけでもない。

「レコード会社を通さなければ発表の場がない、という時代ではない。プロでなくても誰もがSNSで世界に発信することもできるのが今です。ある意味、誰でもミュージシャンになれてしまう世の中なので、以前と比べると、その存在自体に夢がなくなってしまったかもしれませんね」

 実際、庭瀬さんが音楽指導をした高校生から“大学に入ったら音楽はやめる。だってミュージシャンなんか職業にはならないでしょ”と言われたことも……。

「レコードが生まれ、テープができてCDになって……と音楽を取り巻く時代は変わってきました。その時代に沿った形で曲を提供し、ファンを作っていくことが、これからのミュージシャンにとって大事なことだと思います」

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