最後にケース(3)については、特に不快になる理由はないので、不快度は「0」としました。整理すると、

ケース(1)の不快度: 3
ケース(2)の不快度: 3
ケース(3)の不快度: 0
ケース(4)の不快度: 10

 となります。

場合分けに対応する不快度を考えてみる(画像:著者作成)
場合分けに対応する不快度を考えてみる(画像:著者作成)
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降水確率とかけ合わせて「期待値」を導く

  次に、「期待値」という考え方を持ち込みます。降水確率が50%(0.5)の場合、逆に晴れる確率は50%になることに注意すると、「傘を持っていく」と「傘を持っていかない」の期待値は次のようになります。

傘を持っていく:3×0.5+3×0.5=1.5+1.5=3
傘を持っていかない:0×0.5+10×0.5=0+5=5

 すなわち、「傘を持っていかない」のほうが不快度は高いということになります。人間は誰しもわざわざ不快になるほうを選んだりはしません。降水確率が50%の日は、傘を持っていく選択が合理的だと説明ができます。

 この考え方を使うと、降水確率をPとしたとき、それぞれの期待値は次のように計算できます。

傘を持っていく:3×(1-P)+3×P=3-3P+3P=3
傘を持っていかない:0×(1-P)+10×P=0+10P=10P

 このような期待値で表現される価値観をお持ちの方にとって、傘を持っていくという選択が合理的になるのは、どのような場合でしょうか。傘を持っていくということは、その選択をしたほうが不快は少ないと考えます。すなわち、次の不等式が成り立ちます。

3<10P
Pについて解くと
P>0.3

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 つまりこの人物は、降水確率が30%を超える場合は傘を持っていく判断をするということになります。

 お気づきのように、この考え方で得られる結論は「不快度」としてどのような数値を設定するかで決まります。不快度は、何をどれくらい不快に感じるかを直感的かつ曖昧な状態にせず、極めて具体的な言語に変換した結果です。つまりその人物の感覚が数値化されているものと言えます。

よろしければあなたも同じように試してみてください。あなたは降水確率が何%以上なら傘を持っていく判断をする人物でしょうか。

深沢 真太郎(ふかさわ しんたろう)
Shintaro Fukasawa
BMコンサルティング代表取締役、ビジネス数学教育家
一般社団法人日本ビジネス数学協会代表理事。ビジネス数学を提唱する人材教育のプロフェショナル。公益財団法人日本数学検定協会主催「ビジネス数学検定」1級(AAA)は日本最上位。これまでに指導した人数は、延べ7000人。「ビジネス数学」の第一人者として確固たる地位を築く。企業研修のほか学生やプロスポーツ選手などの教育研修にも登壇。数学的な人材の育成に力を入れている。著書に『「仕事」に使える数学』(ダイヤモンド社)、『数学女子智香が教える 仕事で数字を使うって、こういうことです。』(日本実業出版社)など。2018年には小説家としてデビュー作『論理ガール』(実務教育出版)を上梓。