目次
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ー 仕事が激減していた時期に息子を引き取る
Page 2
ー 「勉強しろ」と言ったことは一度もない
Page 3
ー 将来ちゃんと自立してくれればいい

 ネタ番組での大ブレイクから一転、仕事が激減してどん底の日々を過ごしていたお笑い芸人・コウメ太夫。そんなころ、離れて暮らしていた2歳の長男を引き取って育てることに。約15年を経て、息子は数学と将棋に熱中する成績優秀な高校生に成長した。時間とお金をやりくりしながら、子どもの決断を信じて見守る父親像がそこにはあった。

仕事が激減していた時期に息子を引き取る

 最高月収400万円から、900円へ─。かつて“一発屋芸人”と呼ばれたコウメ太夫。収入が激減してどん底だったころ、離婚によって一時的に離ればなれになっていた2歳の息子を引き取った。

 時は流れ現在、息子は私立高校の特進クラスに在籍中。成績優秀で、数学が大得意。お笑いには一切興味がないという。シングルファーザーとして一人息子に向き合ってきた、紆余曲折の15年間を聞いた。

「大学受験を控えているんでね、大事な時期なんです。数学は得意で、塾の先生からは今はもう手をつける必要はないと言われているくらい。課題はもっぱら英語。これがなかなか難しいみたいで」

 おなじみの白塗り、かつらの太夫姿で真剣にそう語る。見た目以外は、高校生の子を持つどこにでもいる父親だ。

「行きたい大学は決まっているので、それに合った対策をしてくれる塾を僕がいくつか探して、息子に選ばせました。保護者面談ももちろん僕が行ってますよ」

 2歳の息子を引き取って以来、実母とともに3人暮らしを続けてきた。子育てに協力してくれた母は今年、90歳になる。

「息子を引き取ったころは、仕事が激減していた時期。時間だけは十分にありました」

 子育てにはお金がかかる。幸いにも、ブレイク中に貯めていたお金があった。息子と暮らし始めたのとほぼ同時期に頭金3000万円で投資用の2階建てアパートを購入

 ずいぶんと思い切った決断だが、家賃収入から月々のローン支払いを差し引いても生活費として毎月25万円ほどが手元に残った

「とにかく時間だけはあるので、幼稚園の送り迎えも基本的に僕がしていました。たまに仕事が入っても、母がいてくれたので助かりましたね」

休日はよく2人で出かけたり、将棋サロンに行っていた(コウメ太夫さん提供)
休日はよく2人で出かけたり、将棋サロンに行っていた(コウメ太夫さん提供)

 朝、幼稚園に送ってからスーパーマーケットで買い物。午後は園にお迎えに行き、簡単な夕飯を作る。一緒に食べ、一緒に入浴し、本の読み聞かせをして、寝かしつけた後が自分の時間だった。

「飲みに行きたいなんて、あのころは思わなかったなぁ。子育てって、自分のことは後回しで、子どもが優先。愛情があるからそれが当たり前にできちゃうんです。もちろん息子が寝た後はひと息ついて、好きなテレビ番組を見ながらビールを飲んだりしてましたけど。それで十分でしたね」