天使ニアさん 撮影/北村史成
天使ニアさん 撮影/北村史成
【写真】まさに王子様!金髪姿のニアさん

 ホストクラブは、もっとも男女のすれ違いが生じやすい社交場なのかもしれない。

 彼女がホストとしてのキャリアを歩み始めたのは、約2年前。それまでは、男装をした女性キャストが接客をするコンセプトカフェ(以下、コンカフェ)で、オーナー兼スタッフとして働いていたという。

ホストクラブのSNSにDMを送り直談判

大学時代にアルバイトで男装のコンカフェ嬢を始めて、大学を卒業してからは“自分の店を持つ”という目標を持って働いていたんです。3年ほどでその目標を達成し、最終的には2店舗のコンカフェを経営していました。楽しい仕事でしたが、コンカフェの世界における自分なりのゴールを達成してしまったんです

 目標を失い、次の人生を考えたときに思いついたのが“ホストへの転身”だった。

ホストを目指した理由は“楽しそう! やってみたい!”という好奇心からでした。接客も好きだし、お酒を飲むのも好き。そして、常に目標があって、毎月ナンバーワンを競っているという実力主義のシステムにも興味があったんです。コンカフェの場合、店や個人の売り上げを気にしているのは店長やオーナーだけで、キャストはあまり意識する機会がないんです。競争もないし、平和な環境ですが、僕には刺激が足りませんでしたね」

 そうして28歳でホストを志したものの、業界のツテは皆無。そもそも、女性ホストになれるのかどうかもわからなかった。そこで彼女は、人気ホストクラブを多数運営する冬月グループのTwitter(現:X)アカウントに、入店を希望するDMを直接送り、直談判したという。

「とにかく聞いてみなければ何も始まらないですよね。その後、面接に呼ばれて採用され、すぐにホストとして働き始めました」

 友人たちに「ホストになる」と告げたところ「女でもホストになれるんだ! でも、ニアなら大丈夫そうだね」と太鼓判をもらったそうだ。

「当時、僕はホスト業界に対して“楽しそう”という印象と、昔ドキュメンタリー番組で見た過酷なイメージしか持っていませんでした。『売れなかったら先輩に罵倒されるのかな』なんて思っていましたが、みんな優しくて逆に拍子抜けしましたね。選んだお店がよかったのかもしれませんが、想像の100倍はクリーンな世界でした。とはいえ、あまり寝られなかったり、どんなに二日酔いでも営業中はお酒を飲まなければならないなど、体力的にキツい場面はもちろんあります」

 決してラクして稼げる仕事ではない、とニアさんは強調する。

女性ホストに対する反応も人それぞれでした。何も知らないお客さんの席について話を始めると、声が男性よりも高いので女の子だとバレるんです。性別を尋ねられて、正直に女性だと伝えると『女の子ホストいいね!』という好意的な人と『男の子だったら推したんだけどな〜』と残念がる人は半々でした。正直、ほとんどの姫から『女の子のホストは嫌だ』と拒否される覚悟もあったので、受け入れてくれる子の多さにも驚きました」

 うれしい誤算とともに、コンカフェで磨いた接客術と話術を持つ彼女は、ホストとして頭角を現していく。気づけば'23年12月には、グループ全体での月間売り上げナンバーワンに輝いていた。そして今年2月から、新店舗の「Blue Rose」で女性ホスト初の“代表”に就任。わずか2年で、業界の常識を覆し続けている。

 そんな彼女の支えになっているのが、応援してくれる家族の存在だ。

ホストになった当初は、なかなか親に言い出せませんでした。教育熱心でまじめな親なので、どんな反応が返ってくるのかもわからなくて……。でも、LINEで送られてくるメッセージでは、僕の仕事について勘づいている様子だったので、最近カミングアウトしました。今では僕のSNSやYouTubeを逐一チェックしてメッセージをくれる、一番のネットストーカーになっています(笑)」