政界に進出し、クールビズを広める

 政界転身はキャスター時代のこと。

ベルリンの壁崩壊、東西冷戦の終結、そして湾岸戦争、日本経済のバブル崩壊と続きました。世界がガラガラと変わっていったころですね。

 私はニュースを伝える側でしたが、このままで日本は大丈夫かと、国内外のニュースを伝えながら、不安も覚えていました。私はそれらをずっとニュースで伝え続けるのか、それとも自分が主体的に動くのか……。崖から飛び降りた瞬間がありました

 1992年、40歳のとき、細川護熙氏とともに、結成まもない日本新党から参院選に出馬。見事、初当選を果たす。翌1993年には衆議院に初挑戦し、定数5の兵庫2区で、日本社会党の土井たか子氏に次ぐ2位で当選。2003年に環境大臣に就くと「クールビズ」を提唱し、オフィスシーンの軽装化を実現。それも女性ならではの視点があってこそ。

私自身がエアコンにとても弱いんです。男性は暑い夏にスーツにネクタイで武装しなければ営業にならない。一方、事務職の女性はエアコンの効いたオフィスに一日中いて、震えている。男性も女性もつらい思いをしていた。

 環境大臣になったときに、気候変動対策としても、今やるしかないと思い、クールビズキャンペーンを始めました。共感がわき起こる一方、批判もありました。でも、今や軽装が当たり前ですよね」

 2007年には女性初の防衛大臣に就任。時の総理は安倍晋三氏で、当時彼女は内閣総理大臣補佐官を務めていた。

官邸にいたら、突然『総理室まで来てほしい』と声をかけられて、安倍総理に『小池さん、頼むね』と言われたんです。私はいくつか閣僚を経験しましたけど、防衛大臣は国民の命を守る使命を担うわけで、重責感が全然違います。常に国際情勢に敏感であることは当然です。当時から北朝鮮情勢などミサイルの脅威にさらされていましたから」

悩んだ末に栄誉礼では黒のパンツスーツで臨んだ 写真/防衛省提供
悩んだ末に栄誉礼では黒のパンツスーツで臨んだ 写真/防衛省提供
【写真】母の着物をリメイクしたジャケットを着こなす小池都知事

 重責と併せて、日本女性初ならではのこんな悩みも。「前例がないので、着任の栄誉礼に何を着ていいかわからない。インターネットで検索してみたんです。するとフランスのアリヨ=マリー国防相がパンツ姿で栄誉礼を受けておられる写真を見つけて、参考にしました

 栄誉礼には上下黒のパンツスーツで登場。颯爽と式に臨む彼女の姿が当時ニュースで盛んに取り上げられた。

 しかし、政治というのはいまだ男性社会。女性の活躍が目立つと、足をすくわれることもありそうだが……。「意外と鈍感で、あまり感じないですね」と艶然と笑う。

 とはいえ言葉にはできずとも、苦い思いは多く噛みしめてきたはず。