別の知人女性が振り返る。
「買い物袋に食材を詰めて帰ってきて“母さんは仕事で忙しいから、僕が夜ご飯をつくってあげるんだ〜”と言うんです。もういい年でしたが“偉いね〜”と冗談めかして褒めると、笑っていました」
部屋にエアコンがなく「給料が出たら母さんのためにも買う」と話すことも。
「お酒さえ飲まなければいい子」
近くの公園の石段に座り、缶ビールを手にタバコを吸う姿を複数の団地住人が目撃しているが、この飲酒が厄介だった。
「普段は温厚で愛想もいいんだが、酒の量がすぎると人格が変わってしまう。騒ぎを起こして警察官が来ることもあった」(団地住人)
事件に発展したのは昨年8月。自宅で母親を刃物で切りつけたとして近くの交番に出頭し、殺人未遂の疑いで逮捕された。団地には5、6台のパトカーが集まり、住民の知るところとなった。母親はしばらく入院し、片手を包帯で吊ったまま退院すると「刺されはしなかったの。私がつまずいて転んだの」と周囲に説明したという。
そして昨年暮れ、転居先も告げず引っ越していった。
「さすがに居づらくなったのか、“長い間お世話になりました”と達筆で一文添え、高級な洋菓子を置いて。その心中を思うと、せつなくて今でも涙が込み上げてきます」(前出・近所の女性)
母親への事件はこの6月5日、東京地裁立川支部が傷害罪で執行猶予付き有罪判決を言い渡したばかりだった。
「判決の翌日に山梨県のアルコール依存症の治療施設に入所したが、すぐ脱走したため母親が警察に届け出ていた」(前出・記者)
刺殺事件のニュースが流れたとき、容疑者の風貌に驚いた住民もいる。
「いつの間にか頭髪が薄くなって、あれは円形脱毛症ではないか。昔はフサフサだったので、彼なりに精神的に追い詰められていたのだと思う」(近所の住民)
まばらな頭髪を気にしてか、昨夏の事件当時は頭を剃り上げていた。そのときに勤務していた新聞販売店では「安藤が来ない」と騒ぎになったという。
「お酒さえ飲まなければいい子。なんでこうなっちゃったのか」(前出・知人女性)
事件現場を再び訪ねると、礒崎さんの好物か、ポテトチップスとジュース2本が供えられていた。何にどれほど悩もうと、人の命を奪っていい理由になるはずがない。