目次
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ー 成人の5人に1人が患う“慢性腎臓病”
Page 2
ー 間違った肉の食べ方に潜む3つのリスク ー 赤身肉やレバーがリンのとりすぎにつながる
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ー 腸で作られる悪玉菌も腎臓にリスクが

 空前のプロテインブームが続き、炭水化物を抜いて肉をメインに食べるダイエットや、「高齢者のフレイル予防には肉を食べたほうがいい」という考えも広く浸透している。しかし、そこには意外な落とし穴がある。

「肉は筋力の維持などに欠かせないタンパク源ですが、食べ方に気をつけないと、健康寿命を縮めてしまう可能性があります」

 と警鐘を鳴らすのは、腎臓専門医の高取優二先生。

「肉に含まれる必須アミノ酸は、とりすぎると老化を促すことがわかっています。そして特に、腎臓の衰えを加速させ、慢性腎臓病のリスクを高める要因が、肉の食べ方に関わっているのです」(高取先生、以下同)

 多くの人が抱いている健康イメージとは真逆の側面があるというのだ。

リンを多く含むウインナーやハムなどの加工食品も取りすぎに注意 ※写真はイメージです
リンを多く含むウインナーやハムなどの加工食品も取りすぎに注意 ※写真はイメージです

成人の5人に1人が患う“慢性腎臓病”

 近年注目されている“慢性腎臓病”とは、腎臓の働きが慢性的に低下した状態の総称。患者数は増加傾向で、2020年に発表された推計データでは、成人の5人に1人が罹患(りかん)し、“日本人の新国民病”といわれている。

「悪化すると、心筋梗塞や脳卒中を発症するリスクが上がります」

 腎臓は、身体の中で目立った働きをしていないと思われがちだが、実は老化を防ぎ、寿命を延ばすためには非常に重要な臓器だ。

「血液中の老廃物や毒素を濾過(ろか)し、尿によって体外に排出させるのが腎臓の役割の一つです。老廃物の排泄(はいせつ)といえば多くの人は便を想像しがちですが、便よりも尿が重要。

 便は2、3日出なくても健康に大きな害はありませんが、尿が丸一日出なければ、汚れた血液が身体中を巡り、命の危機にさらされてしまうんです」

 そんな重要な働きをしていながら、腎臓の大きさは30代をピークに、加齢とともに縮小し、機能も衰えていく。

「腎臓の濾過機能は、健康な人でも40代ごろから落ちていきます。さらに、食生活の乱れなどにより糖尿病や高血圧になると急激に低下。そして、一度失った機能は戻すことができません」

 腎臓の機能低下は自覚症状が出にくいため、気づかないまま進行し、むくみやだるさなどの症状が出たときにはすでに腎不全で手遅れということが多い。

「ですから、早い段階で生活習慣を見直し、腎臓機能が落ちるスピードを速めないことが重要なのです」