2019年6月に改正動物愛護法が成立。それに伴い数値規制が定められました。飼育頭数や出産回数の制限、幼齢の犬猫の販売制限(56日規制)、虐待の罰則強化など、悪質なブリーダーやペットショップを抑制する目的で、明確な基準を設けたかたちです。

 しかし、前述したような事件やトラブルは後を絶たず、「法改正しても何も変わっていない」と憤りの声も上がっています。

劣悪な飼育環境でも営業を続ける

 法の運用は各自治体で格差があり、例えば、大きな事件があった自治体では、厳しい監視(立入検査等)や指導が行われています。また、飼育施設への抜き打ちの訪問をたびたび行い、違反があればそれが改善されるまで一時業務停止にしているところもあります。

 一方で、立入検査をしていてもその監視や指導がゆるく、劣悪な飼育環境のままずるずると営業を続けるケースも多々あります。

 実際、逮捕された男の飼育場は、以前から保健所に近隣住民からの通報があり、12回も立入検査を行っていたとのこと。「もっと早く逮捕できていれば、救える命もあったのに」と、対応を疑問視する声もあります。

 大半の自治体が業務多忙、職員や獣医師の不足などを理由に、法の運用がなされていないのが実情です。まずは、「監視の目」を強化し、警察との連携も密にし、法を順守できない悪徳ブリーダーを排除していかなければ、何も変わりません。

 男はペットオークションに子犬を卸していました。ペットオークションといえば、今年2月に環境省の一斉調査により、子犬や子猫の誕生日偽装が発覚したばかりです(関連記事:山中に違法な繁殖場「悪徳ブリーダー」偽装の手口)。

 ペットショップに並ぶ子犬や子猫の多くは、オークションから流れています。そして、オークションを利用して犬や猫を販売するブリーダーのなかには、犬や猫の命をただの「商品」としか考えない悪徳ブリーダーが多数存在しています。

 利益を得るためにやみくもに大量生産を繰り返し、命を奪ったとしても罪の意識はありません。

 そうしたブリーダーのもとでは、子犬や子猫は劣悪な環境で生まれ、幼い頃に親や兄弟姉妹と離され、オークションのために何度も移動を強いられ、全国のペットショップで展示販売されることになります。来る日も来る日も狭いケージの中で人の目にさらされ、挙句の果ては衝動買いした飼い主に捨てられるという悲しいケースも多々あります。

 流通過程(ブリーダーが出荷してから飼い主に販売されるまで)の間に年間約2.6万匹が死亡しているとの報道もあり、大量生産と展示販売は多くの問題を抱えています。