「乳がんと聞くと、丸い腫瘍が胸の中にできるように思われるでしょうが、私のがんは円柱状でゴツゴツとして、胸の奥底に縦に伸びるタイプでした」
早急に決めていく感じに不信感を抱く
触診しても、縦に長く胸の奥の位置にあったことで、触れても4.5cmの大きさを感じとれなかったのだ。がんを発見してくれた病院ではすぐに手術をすすめられたが、強い違和感を感じたという。
「最初から全摘を提案されて。“全摘しない方法はありませんか?”とお聞きしたら、“リスクが高くなるので全摘をすすめます”と」
河合さんが戸惑っていると、ドクターは明らかにイラついた様子を見せた。
「この先生に手術を任せるのは嫌だなと。説明された用語がまったくわからなく、それをフォローする感じもないまま手術日だけを早急に決めていく感じにも不信感を抱きました。わからないまま人に命を任せるのは怖いなと」
全摘以外に方法はないのかを知りたく、セカンドオピニオンを求めたものの、そのドクターはいい顔をしない。
「それまでの検査資料を出してくださらなくて。病院の事務所に連絡してやっと出してもらえたんです」
河合さんはセカンドオピニオンを求める作業を着々と進めるうちに、乳がんに対する知識を深めていく。そんなあるとき、前出の親友から乳がん治療についての本をすすめられた。その本でがん細胞を凍結させる最新治療があることを知った。
「その本の著者である昭和大学病院の中村清吾医師の診察を受けたかったのですが、セカンドオピニオンを受けられるまで2か月待ちの状態でした」
かなり先の予定だったので、もう1か所、乳がんの凍結療法を行っている千葉県の亀田病院にも行ってみることにした。しかし、「手術の予定が埋まっていて手術まで2か月待ち」との答え。最終的に3か所診察を受けたが、すべて全摘しかないとの意見だった。
ここに至ればもう覚悟を決めるしかない。すると幸いにも昭和大学にキャンセルが出て、3週間後に手術を受けられることとなり、右乳房全摘出に至った。河合さんは経緯を振り返って言う。
「正直、私もセカンドオピニオンを申し出るときには勇気がいりました。先生に失礼に当たるかもしれないと思いましたし。とはいえ、命にかかわることですから、理解してから命を託したかったんです。それでなければ満足のいく治療なんて受けられるわけがないと」