フィギュアスケートの後輩でもある荒川静香さんらも入院中に駆けつけた。荒川さんとは彼女が15歳のときに出会って以来、妹のような存在
フィギュアスケートの後輩でもある荒川静香さんらも入院中に駆けつけた。荒川さんとは彼女が15歳のときに出会って以来、妹のような存在
【写真】入院中に駆けつけてくれた後輩の金メダリスト

 がん発見から2か月後の8月。がん切除の手術と同時に再建用のエキスパンダーを入れた。

女性の場合、胸が片方ないと転びやすくなるそうです。それもあり、再建をすすめる医療機関は多い。見た目の問題だけじゃないようです

乳頭と乳輪の再建は断念

 想定外だったのが、自分がケロイド体質であったこと。

手術で乳頭と乳輪を切除しました。耳の軟骨で乳頭をつくり、医療イレズミで乳輪を再建することができるので、当初は私もそうするつもりでした。ところが手術の傷口が、体質でケロイド状になってしまって。これ以上、身体を傷つけることはしたくないと、乳頭と乳輪の再建は断念しました

 再発は防止したいが、抗がん剤治療は避けたい。そこで遺伝子検査を受けた。

中村先生の見立てでは、私は、“抗がん剤を使用することなく、ホルモン治療のみ”で再発が避けられるタイプのがんだそう。ただ、そのためには遺伝子検査を受けてはっきりさせないと、と

 その費用で45万円。がん保険に入っていてよかったと思ったという。

がんとわかると保険で百万円が受け取れたんです。百万円あれば遺伝子検査も受けられるし、およそ10万円のPET検査(陽電子放出断層撮影)も躊躇なく受けることができますよね。がん治療って、治療は保険でどうにかできても、検査にお金がかかるもの。その部分の選択肢を広げてくれるのががん保険で、入っていて助かったなと

 がん判明から10年たった今年の夏。

普通に生きられていることのありがたさを感じますね。かつては負けず嫌いなアスリートだったけれど(笑)、人生勝ち負けじゃない。いろんな人の思いに触れられた、がんを経験した今のほうが幸せですね

河合彩 元フィギュアスケート・アイスダンス日本代表。1998年、大学在学中に日本代表として長野オリンピックに出場。1999年、アナウンサーとして日本テレビに入社。現在は日テレ学院講師、フィギュアスケートインストラクターとして活躍。

取材・文/千羽ひとみ