仕事を続けながらがんと共存し、治療を行う。その上で、やはり心配なのはお金のこと。がんというと高額な医療費のイメージも─。

がんと診断されて心配なお金のこと

「標準治療は保険が適用されるとはいえ、がん治療はやはりお金の負担は大きいですね。新しい抗がん剤などは高額なものもあり、治療費を副作用の一つとしてとらえる見方もあるくらい。ただ幸いなことに、がんになった患者さんの治療費や生活費を補ってくれる公的制度があります」(前出・勝俣先生、以下同)

勝俣範之先生●日本医科大学武蔵小杉病院腫瘍内科教授、部長、外来化学療法室室長。国立がんセンター医長を経て、2011年より現職。あらゆる部位のがんを診られる「腫瘍内科」の立ち上げは、当時の日本では画期的であった。国内における臨床試験と抗がん剤治療のパイオニアの一人。
勝俣範之先生●日本医科大学武蔵小杉病院腫瘍内科教授、部長、外来化学療法室室長。国立がんセンター医長を経て、2011年より現職。あらゆる部位のがんを診られる「腫瘍内科」の立ち上げは、当時の日本では画期的であった。国内における臨床試験と抗がん剤治療のパイオニアの一人。
【写真】50代前半までは女性のほうががん患者が多いが、その後、男女逆転する

 日本ではポピュラーな高額療養費制度だが、申請には高額療養費の支給申請書が必要で、これを公的医療保険の窓口に提出する。ただ支給は受診した月から3か月程度かかるので注意を。もしそれまでに医療費の支払いが困難なときは、無利息の高額医療費貸付制度も用意されているので活用したい。

「海外ではこうしたものを聞いたことがありません。日本が誇る医療費の支払いに関する素晴らしい制度の一つだと思います」

 がんにもさまざまな公的制度が用意されているものの、

「残念ながらほとんど知られていない」と勝俣先生。

「例えば、いまだに誤解が多いのですが、障害年金は高齢者だけのものではない。老齢年金や遺族年金と並ぶ公的な年金制度で、条件を満たせば65歳未満の現役世代でも受給できます。ぜひ知っておいてもらいたいです」

 また患者自身や家族が申請しないと受給できないものが大半で、知らず知らずのうちに権利を放棄していることも。

「経済的な不安を取り除くためにも、ぜひこれらを利用していただきたい。まずはがん相談支援センターの相談窓口に聞いてみるのもいいでしょう。公的制度を上手に利用していただきたいですね」

 勝俣先生はがんとともに生きる人生は特別なものではないことを改めて強調する。

がんは40〜50代ごろから発症する確率が高くなる。その世代の多くの方々は、いわゆる現役世代。がんになったら、もう仕事ができないのではないかと悩む方も多いでしょう。しかし、5年生存率も高まっており、厚生労働省によると、がんサバイバーは全国に500万人以上いるといわれています。がんと共存しながら仕事や生活をしている方は増えている。国としてもそうした方々を支援するための施策をいろいろと打ち出しています。たとえがんになったとしても、あきらめず、希望を持ってほしいと思います」