「最初に思いついた感想は言うな」

 萩本さんは「わらべ」が売れることを確信していたそうで、のぞみが不祥事を起こし、2人体制になったときも、「大丈夫」と背中を押してくれたという。

「お兄ちゃん(見栄晴)が、空いたポジションを狙っていたのを覚えています(笑)。2枚目の『もしも明日が…。』は、全国のお母さんが台所で夕飯を作りながら口ずさめるような歌を作りたい─そういったコンセプトがあったと聞きます。

 私たちは、本当に娘のように可愛がられ、怒られたりしたことはまったくなかった」

 萩本さんから教わったことは、その後、芸能活動を続けていく上でも指針になっていると話す。

「私はリポーターなどをする機会が多くて、そのときにアドバイスされたのは、『最初に思いついた感想は言うな』ということ。おいしいと感じても『おいしい』とは言わずに、3つ先に思いついたことを言いなさいって。お父さんは、楽な道が好きじゃないんですね。悪口や下ネタを否定しないけど、『簡単に笑いを取れるから自分はしない』と話していました」

インタビューに応じた高橋真美さん 撮影/佐藤靖彦
インタビューに応じた高橋真美さん 撮影/佐藤靖彦
【写真】「絶妙な太り具合」で抜擢、“たまえ”時代の高橋真美さん

 そして、「常に周りを気にかける人」とも付言する。

「『欽どこ』は公開収録ですから、前説でお客さんを楽しませます。その後、本番が始まる合図の“Q出し”をするのですが、お父さんは『3、2、1って合図をするとお客さんが緊張して、温めた意味がなくなる』と、Q出しをしないようにしていた。そうした細かい配慮は、私も大切にするようにしています」

 娘として、高橋さんは父の教えを守り続けている。ブログでは、たまえが宿ったかのように、体重をそのまま記述するなど“ダイエットの記録”を綴り続ける。

「高橋真美の人生とは別に、萩本たまえの人生があるように感じるんです。私と一緒に、たまえちゃんも年を取るけど、あのころの視聴者のみなさんが『たまえちゃん、いつまでも元気そうでうれしい』と思ってくれるように生きないとなって。望まれたら、いつでもパジャマを着て、歌えるように。私が責任を持って手入れして、たまえの始末をつけるしかないと思っているんです(笑)」


取材・文/我妻弘崇