ほかにも『仮説思考』『差別化集中戦略』といった経営学の考えは、息子さんの学習に役立ち、麻布中学合格への道しるべとなる。しかし、「この本は、受験のハウツー本ではありません」ときっぱり。
「良い関係を築きたいなら、相手を理解することは必須」
「そもそも私は受験に詳しいわけではないんです。ただ、僕の趣味が“息子”なだけで(笑)。彼が生きやすいように整えた結果がたまたま今回の中学合格につながった。タイトルから受験にフォーカスされがちですが、私が本当に伝えたかったのは、他者理解についてなんです」
というのも、発達障害を学ぶことで、息子さんを理解できるようになると同時に、赤平さん自身にも、ある変化が起きたのだという。
「人間関係が良好になり、それまで以上に人のことを理解できるようになりました。でもそれは自然なことで、発達障害を理解することはすなわち、他者理解を深めることでもあるのです」
発達障害はいわゆるグレーゾーンも含めると、人口の20%いるといわれている。同じ部屋に5人いたら、そのうちの1人は該当するということだ。また、ひと口に発達障害といっても、ADHD、ASD、LDなど、いくつかの障害を併せ持つことがほとんど。
重症度も人によって異なり、日常的にサポートが必要な人もいれば、「ちょっと変わった人」という場合もあるのだ。
「発達障害を理解するということは、その人がどんな個性を持つのかを知ること。でもそれは、社会生活を送るうえで、誰しもがやっていることなんですよね。仕事も家庭も恋愛も、良い関係を築きたいなら、相手を理解することは必須です」
本書の内容は、職場での人間関係に悩む人の手助けにもなる。タイトルにMBAという言葉を入れたのは、赤平さんのこだわりで、「MBAと発達障害理解は親和性があるので、ビジネスパーソンに特に興味を持ってもらいたい」という思いから。
「例えば職場で、何度も同じミスをする部下がいたとします。それを『あの人は仕事ができない』で終わらせたら、職場環境はいつまでたっても変わりません。そうではなく、あの人の個性を把握した上で、どうしたら覚えられるんだろう?と意識を変えてみるのです」
メモにして渡す、メールで指示するなど、その人の個性に合わせたやり方を模索していけば、どれかはヒットするかもしれない。他者理解は、仕事を円滑に進めるためのカギでもあるのだ。
アナウンサーとして20年以上のキャリアを持つ赤平さん。息子さんへの声かけも、
「あらゆるバリエーションを試せるので、その点では自分のスキルが生きていると思います」