打ち合わせ時の西田さんからは、演技中とは異なる一面も垣間見えたという。
「映画やドラマでは表情豊かな西田さんですが、打ち合わせの場では、とても寡黙。熟考しながら慎重に言葉を選んで語る姿が印象的でした」
後任決定に「よかった」安堵の表情
自身の活動と並行しながら俳優たちの仕事と生活を守っていた西田さん。2020年に新型コロナウイルスの感染拡大により、映像作品の撮影や舞台公演の中止が余儀なくされた際は、政府に向けて本人名義で声明を発表。仕事のキャンセルが横行し、十分な補償を受け取れない演者たちの現状に、
《文化と芸能界を支える俳優へご配慮下さいますよう要望いたします》
と、訴えるも……。
「日俳連の事務所には“役者風情が何を言うか”といった、抗議の電話やメールが殺到しました。それでも西田さんは意見を曲げず。本当に頼もしい方でした」
池水さんが最後に西田さんと会ったのは、亡くなった月と同じ10月だった。
「以前から、体調不良と多忙を理由に理事長の退任を申し出ていて、その日は後任を決める打ち合わせだったんです。後任が無事決まった際は“よかった、よかった”と安堵の表情を浮かべていました。役者としてはもちろん、最後まで演者や団体のことを思う素晴らしいリーダーでした」
西田さんの遺志は、これからも受け継がれていく─。