変わらない企業の実態
こうした状況を踏まえると、小林製薬が誠実な対応をしているのか、疑問が残る。
「前会長が、特別顧問に就任し、いまだに多額の報酬をもらっています。これが示すのは、今も創業家が絶大な権力を握っており、企業の実態は何も変わっていないということです」
そう話すのは、企業のコーポレートガバナンスの専門家で青山学院大学の名誉教授である八田進二氏。
事件発覚時、同社の会長であった創業家出身の小林一雅氏が辞任をするも、その後は特別顧問に就任。現在、一雅氏には、通常顧問の4倍となる月額200万円の報酬が支払われており、今も同社の会長室を利用しているという報道もある。
前出の同社広報に、この件も確認すると、
「確かに、現在も特別顧問が会長室を利用しています」
と回答した。
そのうえで前出の八田氏は、こう指摘する。
「独立の立場で業務執行を監視・監督すべき社外取締役が十分に機能していなかった。企業というのは、不祥事が起きた際には隠ぺいしたり、公表を先送りにしたりするものです。今回も対応が後手になったのは、そういった理由からでしょう。そこで本来であれば、問題が発覚した段階で、執行部に対して毅然たる態度を持って、事態の改善を図っていくのが社外取締役の役割です。それなのに、前会長が特別顧問に居座っている。今も社外取締役は何らの説明責任も果たしていないのです」
これが被害者への補償についても、影響を及ぼす可能性があるという。
「会社の中の人間だけでは、内向き思考からお互いをかばい、責任追及についても、中途半端になってしまう。だからこそ社外取締役には、社会全体が納得できるような感覚が求められるわけです。しかし、その社外取締役に対しての信頼性が毀損しているわけですから、期待するのは無理でしょうね」(八田氏)
被害者が本当の救済をされる日は、いつ――。