日本の文化やスピリットを海外に。ふたりは世界を驚かせるか
着物姿も板についた浮代さんは言う。
「子どものころ、米一粒一粒に神様が宿っているから、きれいに食べなさいと命をいただく大事さを教えられました。お天道様が見ている、というのもいい教えですよね。そんな日本のスピリットも含めて、これからも大切にしたい」
浮代さんは講演会やラジオ、テレビで話す機会も多い。よく通る美声で、わかりやすく話してくれるのが魅力だ。
「私は人前で話しても緊張しないんです。子どものころ、父が家でそろばん塾をしていて、帰ってくるまで先生役をやらされていました。バンド時代には、ステージに立っていたし。そういう素養があったのかもしれません。人生に無駄な経験は一つもない、というのが信条です」
どこへ行っても平常心で話せる浮代さんと、その名プロデューサーであるいつかさんは、江戸文化を海外にアピールしたいと考えている。

いままで書き上げた蔦重関連の書籍と。最新刊は1月15日に発売された『蔦重の矜持』(双葉社)だ。前出・『蔦重の教え』の続編となる
「浮代さんは、探究心旺盛なオタク。明るくて信頼できる人です。私の提案も真摯に受け止め、考えてくれます」
世界50か国以上を訪れ、各国にセレブ人脈を持ついつかさんは浮代さんにとって心強い先輩だ。
「2年前に亡くなった私の父と浮代さんは誕生日が同じ、父親同士の命日も同じ。今では宝塚の大階段のような神楽坂のお寺で、トップスターよろしく、てっぺんのセンターに墓石が仲良く並んでいます」(いつかさん)
「『蔦重の教え』に登場する蔦重のモデルはいつかさん。パワーと発想力と実行力が蔦重に似ています。いつかさんは、人のいいところを見つけて、引き上げてくれる人。私にとっては令和の蔦重のような、ありがたい存在です」
ふたりが世界にどんな変革を起こしてくれるか楽しみだ。
<取材・文/藤栩典子>
ふじう・のりこ フリーライター&編集者。料理、ガーデン、インテリアなど生活まわりを取材・編集。『島るり子のおいしい器』(扶桑社)『上條さんちのこどもごはん』(信濃毎日新聞社)『美しきナチュラルガーデン』、『66歳、家も人生もリノベーション』(主婦と生活社)ほか。