「説明を受けた時は女性として強い抵抗を感じましたが、がんに勝つにはやらなきゃだめだ、とその場で決心しました。でも手術は初めてだったのでとても怖くて……。同じ病気で闘病中の方のブログを読んだり、芸能界で病気と闘っている先輩方の姿から力をもらったりしながら、自分も乗り越えられると言い聞かせました。
由紀さんに伝えるため、電話をしたら泣けてきてしまって。すると『何泣いてるの。これから病気と闘うんだからしっかりしなくちゃ!』と愛情のこもったお叱りをもらい、すごく励まされました。それから手術までは、病気に勝つんだという強い気持ちで過ごせたんです」
術後の強烈な痛みで心身ともにボロボロに
開腹手術は6時間に及んだ。術後に意識が戻ると集中治療室のベッドの上だった。
「自分は覚えてないのですが目覚めて、すぐ母に『もう手術はしない?』と確認したそうです。本当に怖かったんですね(笑)。もう一度目覚めると身体が何かに包まれていて、火傷するのではないかと思うほど熱くて。下腹部の痛みがとにかく強く、何度もナースコールを押して痛み止めの点滴を打ってもらいました。翌日、看護師さんから病室まで歩いて戻ってくださいと言われましたが、痛みで起き上がることもできず。人の手を借りないと、移動も排泄もできないことがすごく悔しくて……。こんなにつらいものかと、術前に持っていた心の強さはすっかり消えてしまいました」
2週間の入院中は痛みと闘いながら、懸命にリハビリに励んだ。
「退院後も痛みは取れず、坂道や階段では自分の力だけじゃ歩けなくて。自宅のベッドでも手すりがないと起き上がれないので、つかまり棒を購入して自作の手すりを設置しました。今も手すりは欠かせませんし、寝返りをうつと強烈な違和感が。子宮や卵巣があった場所に別の臓器が移動しているような感覚で、いまだに右向きには寝られません」
退院後は再発予防で抗がん剤治療を行うことが決まり、8月から5か月間、3週間おきに計6回の治療が続いた。
「1回目の治療では身体が締めつけられるように苦しくなって。でも徐々に慣れていき、点滴中はマイクを持つ手に痺れが残らないよう毎回凍らせた手袋をつけて治療を受けました。治療後1週間は味覚障害で何を食べてもしょっぱく感じて。気持ち悪さや食欲低下にも悩まされ、その期間はお粥を食べていました」
しかし一番つらかったのは副作用による脱毛だった。
「治療前にすべての体毛を失うと説明は受けていましたが……。演歌歌手はお着物ももちろんですが、髪形も命。楽曲の世界観に合わせて毎回試行錯誤していて、お客様も楽しみにしてくださっていたので髪を失うのが怖かった。でもこのままじゃだめだと思い、美容院でベリーショートにしてもらいました。
排水口や櫛についた抜け毛を見た時に、短いほうが受け入れられると思ったんです。それからウィッグや帽子も数種類購入。先生から、治療後にまた元気な毛が生えるからこの期間を楽しんでと言われ、少し気が楽になりましたね」