『異邦人』でデビュー
メンバーのひとりはその後レコード店の店長になり、『異邦人』で久米さんがデビューした際には、レコードを棚の前のほうに出してくれたという。まだ誰にも知られていないデビュー直後。地元仲間との心温まる交流エピソードだ。
そして'74年、共立女子高校に入学。中学までは風紀委員なども務めるような模範的生徒だったが、その反動がきた。
「いい子で頑張ってきたんだから、ちょっとハメ外してみようと思ったんです。といっても色つきのリップクリームをつけるとか、若い人に“今は普通です”と笑われる程度のことなんですけど(笑)」
だが、先生たちからは大目玉。もともと地毛がアッシュブラウンで天然パーマだったこともあり、登校数日目で風紀担当と学年主任の先生から「その髪は何!?」と怒られることに。
このころ、父はイランのテヘランに単身赴任中。門限や服装などに厳しい父だったが、久米さんの反抗期には不在だったのだ。逆に「怒られた記憶がない」ほど、母は父と真逆。学校から呼び出されて“あなたのお嬢さんは〜”と注意を受けても、責めることはなかった。
「今、思い返すと、母には本当に申し訳ないことをしたと思います」と、しみじみ語る久米さん。'13年に逝去されたことを思うと、その気持ちもひとしおなのかもしれない。
音楽面ではユーミンこと荒井由実(現・松任谷由実)が人気を集めるようになった時期。“八王子といえばユーミンだよね”と校内放送でも定番で、久米さんもアルバムを買って耳コピをしながら、“私もこういう曲を作れたら素敵だろうな”と感じていた。またブラックコンテンポラリーやソウルミュージックなどに目覚めたのもこのころだ。
片や賛美歌や教会音楽に触れることは皆無。八王子に引っ越してからは、教会の日曜学校にも通っていなかった。
「家がキリスト教なら違ったんでしょうけど、うちは仏壇があるような家なので。自分は神様や仏様とは無縁の人間だと思うようになっていました。
それにダーウィンの進化論から、アダムとイブから始まる世界は伝説なのかという生意気な考えも出てきて。神様のことを考えるのはもう卒業という気持ちでしたね」