韓国ではすでに男性もメイクをして街中を普通に歩いていたんです。その文化に影響されて、釜山にいるときは濃いめのメイクをしてました。解き放たれた気分でした」

 20歳のとき広島のアパレルショップ『スピンズ』で働き出し、個性が一気に開花する。

「顔中ピアスだらけの人とか、いろいろな人がいる店でした。あのときが一番メイクが濃かったですね。白いコンタクトレンズをして、毎日ハロウィンみたいな格好で出勤してました(笑)」

 だが店では一つの個性でも、一歩外へ出れば奇異の目で見られてしまう。「おまえキモ」「オカマなの?」と言われることもあった。

「自分がしたいことだからしょうがないって開き直ってました。でも母に『どうせメイクするならきれいにして』と言われて。そうか、メイクが下手だからみんなに笑われるんだと気づかされました」

 海外の動画を参考に、メイクを徹底研究。自分の骨格に合う、美しいメイク術だ。

脱毛症で全身の毛がなくなってしまう

 同時に、大きな悩みを抱えていた。18歳で発症した脱毛症との闘いである。

「最初は10円玉くらいだったので、すぐ治ると思って放置していたんです。でもだんだん広がって親にも隠せなくなって。当時は病院で治療していました」

 日本有数という大学病院の毛髪外来に通院。毎週、通院のたび、ステロイド剤を脱毛箇所に注射する。その数200か所にも及び、泣きながら歯を食いしばって耐えた。

 さらに副作用で顔と脚がパンパンに腫れた。それでも思うような結果は得られない。


「なかなか確立された治療法ってないんですよね。結局24歳のときに全身の毛がなくなっちゃって。眉毛がなくなったのはさすがにショックでした。絶望しましたね」

 メイクスキルに磨きをかけ、一本一本手描きで自然な眉に。ウィッグは高校時代から愛用し、ヘアアレンジで好みのスタイルに仕上げている。