ステージで歌い闘病する人に勇気を
抗がん剤の投与期間を終えたころ、コロナ禍が落ち着き始めたこともあり、バンド活動を再開した小島さん。久しぶりにステージに立ち“歌えることは当たり前じゃない”と実感した。ただ、病気を患う前に自身で作詞した楽曲『ひまわり』の「死ぬこと以外はかすり傷」という一節が心に引っかかった。
「正直に言うと、私自身、闘病を“かすり傷”といえるのかなって。すごく痛かったですし、不安もたくさんありましたし。それに、抗がん剤の副作用でなくなった足の爪は、いまだに生えてきていません。でも、一緒にがんの治療をしていた友人を失うという経験もしましたから、やっぱり生きているだけでありがたいなと。“かすり傷”だと歌えていることに感謝したいと思う自分もいるのです」
現在、小島さんは8つのバンドに所属して活動し、ほぼ毎週末ステージでイキイキとしたパフォーマンスを見せている。歌う姿からは、がんサバイバーだとは信じられない。しかし、今も1日分で約2万円する再発防止薬を飲み続け、頭痛や吐き気、息苦しさといった薬の副作用と闘い続けている。アメリカに血液を送って検査をし、適応しなければ使えない薬だが、『ひまわり』を一緒に歌っていたバンドメンバーの男性は、この薬を使う希望がかなわず膵臓がんで亡くなってしまった。
「体調的につらい日もあります。でも、歌うことをやめたいとは思いません。バンドを応援してくれる人の中には、私と同じようにがんを患った“がん友”もいます。彼らとは“(生き続けるから)ずっと死ぬ死ぬ詐欺だよ!”と励まし合っています」
そんななか、ふと思い出すのは、病院内の乳がん患者が集うサロンで出会った“がん友”の先輩たち。術後の傷口を見せてくれ、触らせてもらったことで、「大丈夫。生きていける」と勇気づけられた。
「今度は私の番。がんだけでなく、今病気と闘っている人に元気な姿を見せて勇気を届けたい。なにより、ライブで一緒に盛り上がって、ひとときでも病気を忘れる時間を持ってもらいたいと思っています。私もライブ中は、がんのことを忘れていますから!」
<取材・文/河端直子>